正中岳城インタビュー
超えなくてはいけないステップを経て、全員でつかみとった優勝

インタビュー・文・写真/舟山 緑、小永吉陽子

インタビューでの正中岳城は、語り口調は堅いのだが、その言葉からは、チーム全体を見渡す洞察力がうかがえる。「各自がチームにインパクトを与える役割を果たすこと、そしてファイナルでは“プラスアルファ”の仕事が必要」と試合前に強調していた正中。日替わりで誰かがチームの波をとらえて、その役割を果たしたからこその優勝だった。そして正中がルーキー以来のファイナルで体感したのは「3戦勝つことの難しさ」と「やりきってステップアップしたからこその優勝」ということだった。仕事人集団を束ねたキャプテンが感じた優勝とは。
 
※インタビューは共同囲み取材から、インタビュアーが質問したもので構成しています。
 

3勝するのはしんどいこと。これをやらないと超えることができない、というのがわかった

あとから出て、試合の流れを掌握するのが正中の仕事。第3戦は10得点で要所のシュートも当たった

――3戦目が終わって「まだアイシンに勝ったという気持ちではない」と言いましたが、それは優勝を決めていなかったから、あるいはもっと内容を含んだ意味でしたか。

いろんな考え方ができると思います。まだ優勝していない時点で勝ったと思わないこと。これは自分に対しての戒めがまず1つ。さらに、過去の苦い経験が自分たちにはありますから、そこから学ばないといけない。ただそれを知らないメンバーもいます。5年前、僕がルーキーの時にアイシンには2勝1敗まで持ち込んで逆王手をかけられ、優勝をさらわれたという過去の経験がありますから。そのことも頭にあったし、シリーズの流れは生きたものだから、どうなるかわからないという意味もありました。

――3Q終盤からジリジリと引き離しました。相手の守りが緩くなったと感じましたか。

そこまで感じたわけではないです。ただ、今日の前半は、僕たちにとっても圧倒されるものがありました。まさかそこまで出来るチームだと思っていなかったので。でも、それが40分間続くわけではないと思っていました。インサイドの選手の疲労感は見てとれたので、粘っていけば大丈夫だと思っていました。

――どのあたりでそれを感じましたか。

2Qの終わりぐらいで、ジェイアール選手(桜木)にボールに入って簡単に外のシュートを打って落ちて、リバウンドをとって大司(伊藤)が決めたところです(ブザービーターの3P)。あの場面はインサイドで勝負をされてうちのインサイド・プレイヤーにファウルがこんだらしんどい場面でした。でも、向こうが簡単に勝負して(外角を打って)“楽”なほうをとってきたので、「このまま続けていけば……」という気持ちにはなりました。

――4戦を振り返ると、1戦目の負けは油断ではなかったですか。

もちろん勝ちゲームだったと思います。でも、油断とかではなく、シリーズの入り方の経験のなさからきたものだと思っています。向こうは(ファイナルに)慣れている余裕があったかもしれません。あの結果には失望しましたが、1戦目の入り方がすごく大事だというのが分かりました。試合後のロッカールームはものすごく重たい雰囲気でしたが、油断というよりも、自分たちが超えなくてはいけないステップだったというのが実感です。

第1戦は「個々の選手が、数ある選択肢に迷いが出た」と反省したが、2戦目以降は「超えなくてはいけないステップを乗り越えた」(正中)

――3戦目、4戦目は、勝負どころですごい集中力を見せました。チームとしてプレイの質が上がったと言えるのではないでしょうか。

そうですね。3月末ぐらいから「プレイオフモード」と言われながら、それまでは競っても勝ちきれない試合が続いていました。でも、このプレイオフでは決めなくてはいけないところでしっかり決めることができました。だから、チームとしてステップアップができたという実感があります。

――この4戦を終えて、ファイナルの戦い方がわかってきたという手応えは?

想像はしていたのですが、3勝するのはすごくしんどかったです。初日に3つ勝つというのは想像ができず、今日のこの1Q、このワンプレイを戦うのに精一杯で、リードしているときほど時計が進むのが遅く感じられました。試合を経るごとに向こうもタフなプレイでどんどん応えてきて、それは想像を超えていましたが、その中でファイナルらしい戦いができ、相手に1つ取られながらも自分たちが3連勝することができました。シリーズをわかったわけではありませんが、これをやらないと勝てない、これをやらないと超えることができない、というのがよくわかりました。

――このシリーズで自分自身、「ここができた」、あるいは財産になったものは?

この瞬間(優勝)を迎えられたことがまず1つです。1、2戦目は自分のパフォーマンスが出来ず、3戦目はチームメイトがいろんなチャンスを作ってくれ、4戦目にこうして優勝の瞬間を迎えることができました。いい選手というのは、チャンスをものにできることだと思います。今までも自分自身、それなりにチャンスをもらってきましたが、なかなかそれを使うことができずにここまできました。でも、今日はチームの一員として結果(優勝)をつかむことができ、選手として一段ステップアップできたかなと思います。少しわかりにくいかもしれませんが、この結果を得たこと、それに対していろんなプレイをしたこと、そこに自分自身のステップアップを感じています。

正中と岡田がチームの中心となり、悔しい歴史を乗り越えて優勝を果たした

――同じ質問を岡田選手にもしたのですが、ルーキーシーズン(2007-2008シーズン)にファイナルでアイシンに敗れましたが、今シーズン、自身が初優勝した気持ちを聞かせてください。

この瞬間で、このタイミングで優勝するのは必然性があったと思いたいです。1年目は先輩たちに連れてきてもらった舞台で、自分自身、右も左もわからずに一生懸命にやっただけのシリーズで、(2勝1敗からの負けで)悔しさも残りました。チームはその後、下降の一途をたどったわけですけど、ようやく去年、手応えのあるシーズンを送ることができました。その中で自分も主力としてチームの勝ち負けに関わりながらシーズンを送ることができ、まずそういった去年があったから、それが今年のこの瞬間につながったと思います。

僕がルーキーで入った年に、古田(悟)さんがオールジャパンのプログラムで僕と岡田と対談した時に、「あいつらが5年経ったときにこのチームの中心になって頑張ってくれるんじゃないか」という話をしてくれました。そういったこともあって、一人前としてはまだまだ未熟ですが、それだけの時間がかかるということを、古田さんが言ってくれたのだと思います。今ようやく5年目でこういう瞬間を迎えることができ、リーグの中心でプレイできているという実感もあるし、またチームの勝敗を左右する責任をもった中で優勝ができました。たぶん1年目とはまた違った決勝だったと思います。(古田さんが言った)5年目に優勝ができて、本当によかったです。