横浜ビー・コルセアーズの躍進
男たちが切り開いたファイナルズへの道

インタビュー/三上 太 写真/加藤よしお

互いの信頼感がチームを成長させ、新チームを3位の座に導いた

 

3位決定戦の前、一番良い試合をしようと、心を1つにした横浜の選手たち

bjリーグがスタートして7年しか経っていない。その間、新規参入のチームが上位に食い込んだ例は数少ない。2006‐2007シーズンに高松ファイブアローズが2位に、2008‐2009シーズンには浜松・東三河フェニックスが3位に入っている。しかし高松の場合は「プレーオフ」というシステムが確立されていないリーグの黎明期であり、浜松にいたっては、bj新規参入ではあるもののチームとしてはそれ以前にJBLで長く戦っていた実績がある。やはりゼロからチームを立ち上げた新規参入のチームがプレーオフという修羅場を踏みながら上位に食い込むのは難しい。

 2011-2012シーズンのbjリーグで3位の座についたのは横浜ビー・コルセアーズだった。名実ともに新規参入チームである横浜がなぜ有明コロシアムのコートに立ち、3位という結果を勝ち得たのか。NCAAの名門、アリゾナ大学を経て、NBAでもプレイ経験のあるレジー・ゲーリーヘッドコーチに話を聞いた。

 

シーズンで一番良い
バスケットをすること

新規チームが3位になった理由は、レジー・ゲーリーHCの指導力によるところが大きい

――まずは新規参入のチームでありながら3位になれた感想をお願いします。

1年目のチームとして有明まで行けたことに関してはすごく自信もつきましたし、嬉しく思います。ファイナルの舞台に立てるチャンスをもらい、そこに行けそうなところまでの試合内容でありながら、結果としてファイナルに立てなかったことは残念ですが、それでも1年目のチームで3位になれたことは嬉しく思っています。

――なぜチーム創設1年目のチームがファイナルズに進出し、3位という結果を勝ち取ることができたのでしょう。ヘッドコーチの考えを聞かせてください。

シーズンを通していろんな試合を戦ってきた中で、選手たちがどんな負けに関しても、その負けから学んでしっかり気持ちを立て直して戻ってくる姿勢がすごく強かったので、その部分に関しては長けていたように思います。

そしてファイナルズに入ってからの私たちの目標は『シーズンで一番いいバスケットボールをすること。結果はそれについてくる』というものでした。シーズン当初から全員がその目標に向かって一生懸命に練習をしてきたわけで、その間、選手たちは私のフィロソフィー(哲学)、考え方、私のバスケットボールに対して、しっかりと理解をして頑張ってきてくれました。今回の結果は選手たちが出してくれた結果だと思っています。

 

――負けから学んで、立て直してしっかりと戻ってくることは口で言うほど簡単なことではありません。

選手が負けた次の日に気持ちの部分で強く戻ってきて、勝ちをもぎとることができた理由の一つとして考えられるのが、選手たちが互いの能力や才能を信じあっていること、選手たち自身が『自分たちはいいチームだ』と信じ合っていることだと思います。私としても、負けている試合の中でも、負けた試合の後でも、オーバータイムになっても、チームメイトを互いに信頼し合うように話をし続けました。互いが互いを信頼し合ってこそのチームだと思うからです。負けた試合の後に選手の気持ちが落ちないように、『今日は負けたかもしれないけど、いい部分もあったし、成長した部分もあった』と言っていました。もちろん修正すべきところはあります。そこは私が修正するだけで、選手の誰が悪いというのは一切なく、常に互いが信頼し合っていくように指導してきました。

3位決定戦を終え、ミックスゾーンに現れたキャプテンの蒲谷正之が、「みんなが互いのことをリスペクト(尊敬)していて、今までにないくらいすごくいいチームだと自分でも思いますし、一人ひとりが人間としてリスペクトして、ファミリーのようなチームなので、練習からも個々を成長しあえるチームだったので、それがすごくよかったんじゃないかと思います」と言えば、司令塔の山田謙治も「ヘッドコーチは常に『1年を通して一番いいバスケットをしよう』と言っていました。最初の頃は選手同士で揉めたり、コーチと揉めたり、いろんな問題もありましたけど、時間が経つにつれて互いを信頼して、コートに立っている選手みんなでボールをシェアできたことが、チームプレイが良くなった理由かなと…。それがあったから、このファイナルズに来られたと思っています」と語っている。

――これもまた、口で言うのは簡単ですけど、実際に「信頼し合う」のは簡単ではないと思います。たぶん他のチームも同じように「互いを信じ合おう」と言っていると思うのですが、それらと横浜は何が違うのでしょうか?

確かにどのチームも同じようなことを話しているでしょう。しかし私たちがなぜ実際にそれができたのかというと、シーズンが始まって1日目の練習から、『チームメイトを信頼し合う』ことを伝えるような練習メニューを取り入れていったからだと思います。たとえば、この選手はこういうことができるから、こういうふうにプレイを組んであげようと。そのうえで、その選手がその動きを決めることができれば、やっぱり周りの選手はその選手を信頼できます。この場面では彼が適任、でもこういうふうにすれば他の誰かが強くなるというようにビジュアライズ(可視化)できる練習を取り入れて、互いの強みを日々の練習の中で理解しながら、強いところをもっと強くできるようにしていったのです。そうすることで、選手自身が互いを信じ合え、試合の中でも互いを生かし合えることができたのです。そして時間が経てば経つほど、互いの信頼度も増していったのです。ウチはどのチームからも『1年目だし、勝ってこない。アンダードッグ(勝ち目がないこと)だ』と思われていました。そう思われたときに、じゃあ試合中に誰を信頼できるのかと言ったら、チームメイトしかいません。チームメイトを信頼しないでどうやって勝てるのでしょう。味方はチームメイトという形で毎日指導してきた積み重ねが、彼らの信頼関係につながったのだと思います。

――チームメイトを信頼して勝つというコーチのコーチングの原点とはどこにありますか?

バスケットはテニスなどの個人競技と違ってチームスポーツなので、5人の中で誰が一番シュートが入るのか、誰にこれをやらせたら一番うまく行くのかと、それぞれの役割があってのスポーツなので、チームスポーツということを考えれば、チームメイトを信頼するところにたどりつきました。

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