アジアのライバル韓国事情<女子編>
困難な国内事情を抱えながらも、5大会連続五輪を目指すライバル・韓国

文・写真/三上 太

昨年のアジア選手権では、日本に逆転勝利。世代交代の危機を乗り越えた

6月25日からトルコの首都・アンカラでおこなわれる「女子バスケットボール・ロンドンオリンピック世界最終予選」。その大会に日本とともにアジア地区代表として出場するのが韓国だ。昨年8月におこなわれたアジア選手権では日本を上回る2位の成績を残し、優勝した中国をあと一歩のところまで追いつめてもいる。しかし韓国女子バスケット界は今、苦しい状況の中にいる。韓国女子バスケット界の現状を紹介するとともに、韓国女子代表の世界最終予選の戦いぶりを予想する。

懸念されていた代表の世代交代は成功するが、高校以下の低年齢層が低迷

ここ数年、韓国女子高校バスケット界の低迷が叫ばれている。高校生年代の日本代表を率いたコーチ陣も口々に「韓国は間違いなく力が落ちてきている」と言っているし、女子韓国代表の“前”監督、イム・ダルシク氏もそれを認めている。自身が率いる新韓銀Sバーズの新人獲得に関する質問にこう答えているのだ。

「韓国の女子バスケット界がおかれている現実として、高校に(有望な)選手がいません。ですから、ここ何年間はいい選手を取れていないのが現状です。いや、実際には取っているのですが、チームの戦力として即効力のない選手を選ばなくてはならないのです。と言うのは、繰り返しになりますが、女子高校バスケの選手たちは本当に(状況が)劣悪なのです。それでも彼女たちは就職しなければいけませんし、こちらとしても選ばなければいけません。それは義務というより、女子バスケの将来を見据えて活性化させなければいけないからです」

その裏にはフィギュアスケートやゴルフといった個人競技に競技者を奪われていることもあるのかもしれない。そのように底辺が揺れている韓国女子バスケット界において、この春、さらなる激震が走った。WKBL(韓国女子バスケットボールリーグ)の新世界クールキャッツがチームを解体し、リーグを脱退すると突然発表したのである。いきなりのことにリーグの総裁も慌てたが、当の総裁も任期を待たずにその座を降りてしまうお粗末ぶり。今は新総裁の指揮の下、なんとか6チーム体制を続けるべく、チームの受け入れ企業を探しているところだ。

常勝・新韓銀行のメインガードであり、今後の韓国を背負って立つガード、チェ・ユナ

そんな状況下で世界最終予選を戦う代表チームを作ったわけだが、監督人事ですったもんだしてしまう。2009年のアジア選手権(インド)から代表チームの指揮を執り、2010年の世界選手権(チェコ)ではアジア最上位の8位、2011年のアジア選手権(長崎・大村)では世代交代をしたヤング韓国を準優勝にまで導いてたイム氏がその任を解かれ、2011年のアジア競技大会(中国・広州)でアシスタントコーチとしてイム氏を支えたイ・ホグン氏が新監督に任命されたのである。

激情家というか、ときに激しい言葉を発することもあるイム氏は、たとえば2010-2011シーズンのファイナルで審判のコールを不服として、試合中に全選手をロッカールームに下げたり、その試合後の記者会見でも審判の質について厳しく批判にするようなタイプである。もちろんそれはバスケットに対する情熱ゆえだと思うが、その一方でここ数年、シーズン終盤になると「イム氏は新韓銀行の監督を辞めて、KBL(韓国男子バスケットボールリーグ)の監督に移ろうとしている。だから厳しいことも口にできるのだ」という噂話も絶えない。そういった事情からもイム氏と協会のあいだに溝ができていたのかもしれない――むろんリーグと協会は別物なので違う理由もあるのだろうが、それでも人間関係以外にスムーズに世代交代を成功させ、アジア1位の中国をあと一歩まで追い込んだ監督を交替させる理由を見つけるのは難しい。

しかもその監督人事がさらなる波紋、疑問を生み出した。イ・ホグン新監督が自身の務めるサムソン生命(2011-2012シーズン、セミファイナルで新韓銀行に敗れている)から1人の代表選手も呼ばず、大会後のリーグ戦を見据えているのではないかという噂が出てきたのだ。もちろんイ・ミソン(34)、パク・ジョンウン(36)、キム・ゲリョン(33)といった代表クラスの選手はみなベテランであり、ケガを抱えているために代表に行けそうにないという判断ではある。その一方で力強いプレイで新韓銀行を苦しめた帰化選手のフォワード、キンバリー・ロバーソン(26)も入っていないとなると、その噂話もうなずけなくはない。

加えて、2010年の世界選手権から韓国のスコアラーとして活躍し、次世代のエースとして期待されているキム・ダンビが甲状腺の病気とヒザ、足首のケガで代表を辞退。力強いプレイでKDB生命ウィナスを引っ張っていたガード、イ・ギョンウンも肩のケガで辞退している。これも噂の域を脱し得ないが、キム・ダンビの辞退は、彼女の所属する新韓銀行がイム氏を更迭させられ、なおかつ新監督のチームからは1人も出さず、自チームからは4人も選ばれたことに反発し、代表に行かせなかったのではないかとも言われている。もちろんそんなはずはなく、結果として代替選手として選ばれた2人のうち1人が新韓銀行の選手(イ・ヨンファ)なので、新韓銀行は結局4人の選手を代表に送り込んでいる。

そういった問題、噂話が先行するなか、さらなるマイナス要素をあげるとすれば、選ばれた選手たちがリーグで痛めた箇所が長引き、5月7日の初召集のときには7人しか集まっていない。日本でもおなじみのハ・ウンジュも最初の練習に参加できなかった1人だし、韓国のエースガードであるチェ・ユナや、インサイドの要になるカン・ヨンスクらも合流が遅れている。

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