佐藤久夫ヘッドコーチ インタビュー
世界に出る経験こそ、今の日本に一番必要なこと

文・写真/小永吉陽子


 

U18男子アジア選手権が8月17日よりモンゴル・ウランバートルで開幕する。この大会で3位までに入れば、来年開催されるU19世界選手権への切符をつかみとることができる。日本代表が戦うチームを作れず、アジアの準々決勝で屈している今、アンダーカテゴリー世代から国際大会での経験を積み重ねていくこと、そして長期的展望を持った育成は望まれているところだ。佐藤久夫ヘッドコーチにU18世代のチーム作りのポイント、今大会の目標を聞いた。

◆U18男子代表メンバー
◆大会特設サイト(日本バスケットボール協会)
◆大会公式サイト(FIBA ASIA)
 

キャリアのなさを大学生との実戦練習で克服。今、チームは成長期

 

細かいプレイの徹底さと選手に考えさせる指導で高校生を育成する佐藤久夫ヘッドコーチ

――U18アジア選手権に向けて、どのようなチーム作りを行い、その手応えはどうですか。

今までのU18のチーム作りのいちばん足りなかったのは試合の経験。練習でいろいろなルールを決めても、実戦経験が少ないままに大会に出場していました。今回の大きなチーム強化は、直前合宿は10日足らずではありましたが、練習のあとに毎日実戦を入れたことが変わった点。とくに連日、大学生と試合経験を積んだことで、高校生が持っている潜在能力を引き出してもらいました。

選手たちにも言っていることですが、このチームは「噛めば噛むほど味が出て来るチームだよ」と。みんなで共通の目標を持って試合をすればするほど、チームとして機能し始めている。ここへ来て、仙台でやった最初の3日間の合宿(8/3~8/5)より、うんといいチームになってきました。

――仙台での合宿も見学しましたが、インターハイ直後ということもあり、疲労からか選手たちに元気が見られませんでした。それが、一週間後には勝負に行くチームになり、活気は見違えるほど。たった一週間の合宿(8/6~8/13)を経て、チームがとても上向きになったのは何が良くなったのですか。

チーム全員が本気で取り組んだからです。コーチングスタッフが本気。選手たちも勝ちたいという気持ちに目覚めてきている。大学生に胸を借りたことで、自然に自分たちの力が引き出されたのも大きいでしょう。高校生と一緒になって声を出し、全力で戦ってくれた大学のチームには感謝しています。

また、ミニ国体のため、合宿を抜ける選手も数名いましたが、その間に残った選手が踏ん張って自覚を出したことも、いいチームの雰囲気につながりました。少ない人数で大学生にはむかっていった試合はいい実戦になりました。

選手たちに言っているのは「君たちは戦う国家隊だよ」ということ。以前のジュニア(U18)では「戦う外交官」という言葉を使いましたが、今は「国家隊」と言っています。国家を代表するプライドが選手たちに出てきたことも伸びた理由にあります。

大学生との対戦で潜在能力が引き出された高校生たち。アンダー世代の強化では、自分たちより格上の海外チームと対戦する機会を多く設けることを、現場は望んでいる

――この成長ぶりは、アジアで戦う手応えにつながっているといっていいでしょうか。

そのままアジアで通用するかという手応えではなくて、チームや選手に潜在している力が出てきているということ。これはものすごく感じます。これまで国際大会を戦った経験から、日本のひ弱さの部分もわかっていますが、それが表に出てきてしまってはアジアは戦い抜けない。世界選手権の切符を勝ち取るには「自分たちは高さがない」ということを認識して、大事なところで全員が絶対に休まないこと。大事なところで助け合うことができれば、アジア上位に行ける可能性はあると思っています。その潜在能力が出てきたところです。

――2年生2名(杉浦佑成=福岡大附大濠、馬場雄大=富山第一)はU16アジア選手権でアジア3位を経験していますが、3年生はキャリアがない選手が多いです。また、前回は大会直前にチーム体制が変更し、佐藤ヘッドコーチが急遽U18の指揮官に就任したこともあり、チームを作る時間がなかったことから、今回はトップエンデバーを含めて何度も選手選考をしてきました。そんな状況下の中で、今年度のU18の選手選考のポイントとなった点は。

現時点で有望な選手、将来性ある選手を選出することはもちろんですが、今年は渡邊雄太(尽誠学園3年)を中心に、彼を生かしていくチーム作りから入っています。ここに選ばれなかった選手でも潜在能力を持った選手はいますが、渡邊雄太を軸として考えた時に、ポジションの組み合わせを考えながら、何度も選考していった形になりました。また、これは例年言えることですが、今年も高さはありませんが、走れる選手層は今までよりあります。また、今年の選手たちは辛いことがあっても下を向いたり、後ろを向いたりは決してしない。向かっていってくれるようになったのが成長したところです。

打点の高さを生かしたオフェンスを展開するエース、渡邊雄太

――渡邊選手は今年度の日本代表候補に選ばれた逸材ではありますが、どのようなプレイを求めていますか。また、どのような育成をしていきますか。

彼はサイズ的にもオールラウンドにこなせることからも、今後の日本が育てていかなくてはならない人材です。ただ、今は壁にぶち当たりながら、考えながら、やっている最中だと思います。オールラウンドといっても、自分はいったい何が得意なのか、いちばん何ができるのかということを考えれば、これという強みがまだない。プレイは柔らかいけれど弱さもある。オールラウンドでありながらも、器用貧乏になるのではなく、強みを作ってほしい。シュートに行くときの身体接触の強さを出していくことも課題でしょう。

でも、これは身体作りを含めて時間がかかるもの。雄太の持ち味をディフェンス面で引き出すことと、チームでいちばん到達点が高いので、それを攻防で出せるようにしていきたい。ポジションは4番(PF)と1番(PG)の兼任を考えています。そこで、雄太が1番をやるときはどの選手と組ませるべきかのアイディアも出していきたい。
  
 

1 / 212