優勝――中国の強化と育成事情
【中国】“ネクスト ヤオ・ミン”の出現がもたらした完全優勝

文・写真/小永吉陽子

一番前で笑顔を弾けさせている長身の選手が“ネクスト ヤオ・ミン”#14ワン・ジェリン。豪快なプレイとは裏腹にあどけない笑顔を持つ18歳

優勝 中国 CHINA

中国にワン・ジェリンあり!
動けるビッグマンの出現で世代交代に光が見えた中国

文句なしの大会MVPだった215㎝の#14ワン・ジェリン。力強いダンクシュートやフックシュート、フェイドアウェイなど、ペイントエリアで得点を量産した

 平均身長199㎝。2メートル台を5人擁してモンゴルに乗り込んできた中国。現在のU18代表には「ネクスト ヤオ・ミン」と呼ばれて期待されている選手が2名いる。一人は215㎝で下半身がガッチリしてフィジカルに強く、ここ一番でみずから得点を取に行く#14ワン・ジェリン。229㎝のヤオ・ミンと比べるとスケールは小さいが、215㎝の身長でパワーと走力があり、かつ勝負強さを兼ね備えるプレイは中国にとって待望のビッグマンだといえる。今夏はロンドンオリンピックに出場する最終候補まで残り、A代表とともに海外遠征をともにした。彼にフックシュートを決められると、アジアの選手はお手上げの高さである。

 もう一人はチーム最長身217㎝で16歳の#15ジョウ・チ。U18世代に混じると、線の細さとパワー不足が目立つが、今年7月のU17アジア選手権では、チームトップの平均14得点をあげて世界7位の結果に貢献している。

 いつの時代も中国には2メートル台のビッグマンは存在するが、彼ら2人は動けてシュートがうまいという点で期待がかけられているのだ。

 今大会の中国は終盤に強かった。韓国との二度にわたるバトルでは、バリエーションある攻め手を持つ韓国のほうが中盤のゲームの進め方は巧かったといえる。中国はディフェンスの的が絞れなくなると、10点以上のビハインドを背負った時間帯もあった。しかし韓国は詰めの甘さで失敗し、そこを見逃さずに一気にたたみかけた中国が王者の意地を見せつけたのだ。
 
 

線は細いが、217㎝の身長とリーチの長さを生かしたシュートのうまさを見せた#15ジョウ・チは来年1月で17歳

 平均22.3得点、10.3リバウンドで得点王と大会MVP(ベスト8以上ではリバウンド2位)を獲得したワン・ジェリンは、韓国との決勝で残り1分14秒から7得点。しかも同点に追いついたのは、今大会はじめて打った3Pシュートであり、これが決まってしまったのだ。これまでインサイドに徹していたワン・ジェリンが、さまか土壇場でトップから3Pシュートを打つまいと、韓国が気を抜いた瞬間の出来事だった。

 また、持ち味のドライブインで苦しい時間帯をつないだスイングマンの#10ガオ・ション(199㎝)や、インサイドに強い得点源の#13ダイ・ファンボ(205㎝)、一瞬の隙をも見逃さないシューターもいる。準決勝の日本戦では、日本がインサイドをケアするあまりに、インサイドアウトからの外角シュートを効率よく決められてしまった。ポイントガードはベスト5を受賞した#4ルゥオ・ハンチェン(188㎝)の強気なリードが光った。彼は2010年にU17、2011年にU19の世界選手権に出た経験を持つ。

 U18代表とBWB(6月に日本で開催されたNBAとFIBAが主催する「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ アジアキャンプ」)に出場した中国の全選手は中国プロリーグCBAのジュニアチームに所属している将来の有望株。選手たちの話によれば、練習は一日8時間。勉強は集団生活の中で勉強時間を設けて全員で受けるとのこと。ただ、大会がある場合はもちろん練習や試合が優先され、まさにCBAジュニアチームはプロになるための訓練所といっていい。ワン・ジェリンは今シーズンから、出身地であるCBA福建省ジュニアチームから昇格し、CBAデビューの予定である。
 
 
だが、次世代ビッグマンが育たない現状には
希望は見えても、決して楽観視はしていない

鋭いドライブ、アウトサイドシュートと多彩に攻めたフォワード、#10ガオ・ション

 ワン・ジェリンはディフェンスと総合的なメンタルが課題とされて、最後の最後にロンドンオリンピックのメンバーからは落選したが、将来性の高さは誰もが認めるところだ。ワン・ホァイユHCはワン・ジェリンをこのように評している。

「彼はもっともナショナルチームに近い選手だが、まだ多くのことを改善をしなくてはならない。しかし、試合の終盤にチームを勝利に導くプレイをしたことで、偉大な選手になる一歩を踏み出した」

 また将来性豊かな選手たちを擁して優勝したことについては「若い世代が優勝したことはうれしいが、彼らを中国代表に押し上げていくことが何より大事」と語っていたように、これまでビッグマンを輩出しても現状のA代表のように、若手の底上げに結びついていないことは危機感だととらえているようだ。

 中国はNBAプレイヤーのヤオ・ミンを擁して4年前の北京オリンピックで予選トーナメントを突破して以来、トッププレイヤーと若手の間に実力差を埋められず、世代交代に苦しんでいる。中国におけるここ数年のアンダーカテゴリーの素材の良さと世界に出続けている経験はそろそろA代表に反映されてくると思われるが、ワン・ジェリンのように有望なビッグマンが出てきても、育成を怠ることなく上のカテゴリーへと押し上げることが中国の課題となろう。

 なお、中国は9月14日から開催されるアジアカップには、リオデジャネイロオリンピックを目指す20歳前後の若手を送り込むというが、その候補の中にはワン・ジェリンの名前がある。ワン・ジェリンはシニア国際大会のデビューを東京で飾る予定だ。