3位――イランの強化と育成事情
【イラン】フィジカルさと巧みさで勝負した“ヤングイラン”

文・写真/小永吉陽子

3位決定戦に勝利した瞬間。ゲームを支配していたのはイランだったが、日本の粘りがどれだけイランを苦しめていたかを物語る構図

3位 イラン IRAN

A代表とアンダー世代の連携が深く
ヨーロッパ遠征で鍛えたゲーム勘を持つアジアの脅威

チームリーダーの#7サッジャード・マシャイェヒ。日本戦でトリプルダブル(26点、12A、11R)の活躍で勝利に導いた。窮地にも動じない大人びたゲームメイクをする

 2次リーグでチャイニーズ・タイペイに土壇場で追いつかれて延長で敗れたときのイランと、準決勝・韓国戦で37分間試合を支配した粘りや、3位決定戦で日本を振り切った試合巧者ぶりは、まったく別のチームだった。決勝トーナメントに入ってからのイランはギアを入れ直して加速させていた。言い換えれば、下位回線では気持ちが緩んでしまう隙のある気質がイランの欠点とも言えたのだが…。

 イランの武器は、地味ながらもリバウンドや接触プレイに負けないことで、ジワジワとリズムをつかんでいくフィジカルの強さだ。203㎝と207㎝のインサイド、199㎝のフォワード陣は、リバウンドに跳び続ける習慣が身についている。リバウンドからのセカンドショットという武器には、準決勝で対戦した韓国も苦しんで後手に回ったほど(リバウンドはイラン44本、韓国32本。インサイドでの得点はイラン54点、韓国22点)。そこへきて、出足から果敢に攻め込んで先手を取り、接戦になればコントロールゲームを仕掛けられる司令塔を擁し、高いアウトサイドのシュートを誇るシューター陣もいる。チームバランスの良さは中国にも韓国にも引けを取らない布陣だった。

 U18イラン代表には、イラン人初のNBAセンター、218㎝のハメッド・ハダディの存在こそいないが、巧みなガードやフィジカルなプレイスタイル、ここぞというところで決めるシューターなどの選手層は、まるでA代表そのまま。まさしく“ヤングイラン”代表だった。
 
 
 
 

BWBでオールスターゲームに選出された#5サレー・フォロータニック。イランのインサイドを地道なリバウンドで支えたパワーフォワード

 主軸はポイントガードの#7サッジャード・マシャイェヒ(180㎝)。日本戦では26点、12アシスト、11リバウンドのトリプルダブルをマークしてチームを牽引した。高校を卒業している年齢だが、すでに今年の冬にはイラン・スーパーリーグ(プロリーグ)で試合に出場しており、その経験は大舞台で発揮された。

 フォワードの#12バビド・ダリールザハン(199㎝)は準々決勝のレバノン戦と準決勝の韓国戦で20点オーバーの活躍をし、ベスト5を受賞した。ただし日本戦では3Pは1本も決まらず、得点よりもリバウンドやブロックショットなど、いやなところで彼に阻まれた感がある。シューターの#8ベフナム・ヤフチャリ・デフコルディ(191㎝)は今大会のフリースロー王(89.3%)であり、3ポイント43.5%(5位)の確率を誇るシューター。日本戦では要所で5本の3Pシュートを決めたが、3Pだけでなく走力あるプレイで得点を稼いだ。平均17得点はイランのスコアリングリーダーでもある。

 そして#5サレー・フォロータニック(203㎝)は派手さこそないが、リバウンドに強く、ゴール下でのシュートやつなぎのプレイをこなす仕事人。彼は高校生ながら、イラン・スーパーリーグに所属してゲームに出場している経験がある。

 ヘッドコーチのマハーン・ハタミは「世界選手権に出ることが最大の目標だが、今大会はファイナル進出を目指していた。ミスを減らすことを課題としてチームを作ってきた」と語る。そのための強化は実戦重視だった。

 イランは日本で開催したBWB(NBAとFIBAが主催する「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ アジアキャンプ」)終了後の6月19日より、ヨーロッパツアーに出向いている。まずはハンガリーに遠征し、ハンガリーとブルガリアのU20~U23世代と対戦。その後は今年からU18の技術顧問に就任したベシロビッチの母国であるスロベニアの同世代と対戦し、7月にはイタリアに飛んでU16~U20世代が混じった4ヶ国トーナメントに出場。イタリアには敗れたが、ウクライナとスウェーデンには勝利している。
 
 
アジアカップで采配をするイランの新指揮官はU18の大会に帯同
主力4選手はアジアカップ予備24名にエントリー

3Pやドライブでの得点力あるSGの#8ベフナム・デフコルディ・ヤフチャリ。年齢は17歳で日本の学年でいえば高校2年生

 2007年と2009年にはA代表がアジア王者になっている。ここ数年でイランがアジアのトップに躍り出たのは、ヨーロッパは強豪のセルビアから2人のヘッドコーチを招き、彼らのコネクションを生かして地理的に近いヨーロッパで遠征を積み、個々の素材の高さを組織的に組み立てるヨーロッパ式のスタイルを取り入れたことが要因だった。驚くべきことに、今回のイランU18で技術顧問として帯同したメミ・ベシロビッチは、イラン代表のヘッドコーチとして9月のアジアカップで指揮を執ることが決まっている。同時期に台湾でジョーンズカップ(主に各国の代表クラスが参戦する国際大会)が行われていたにもかかわらず、A代表ではなくU18に帯同していたのだ。実質、U18代表の指導をしていたのも彼だった。

 モンゴルの会場にて、FIBAのインタビューに対してメミ・ベシロビッチ技術顧問は「私たちは現在と未来をつなぐ方法を見つける必要がある。私の仕事のひとつはU18世代の若手の育成に力を入れること」と語っていた。そして、このU18代表から、先にあげた主力4選手が9月に東京で開催されるアジアカップの予備エントリー24名に入っており、この中から数人がアジアカップにエントリーされる可能性もあるという。彼らは日本開催のBWBに参加もしており、メミ・ベシロビッチが見出した将来有望な選手たちだろう。

 アンダーカテゴリーにとって、A代表は生きた見本でなければならない。イランは今、A代表とアンダー世代が連動した“生きた”強化を進めている。