「世界ベスト4」への道のりと、今後へ継承すべきものを語る
通用したオールコートプレス。“世界”の舞台で物怖じしなかった選手たち

インタビュー・文/舟山 緑  写真提供/fiba.com、JBA

たくさんの収穫を手に帰国した女子U-17日本代表チーム。成田空港にて。(写真提供:日本バスケットボール協会)

女子アンダーカテゴリー史上初! U-17代表が世界4強入り
通用したオールコートプレス。
“世界”の舞台で物怖じしなかった選手たち
 
 

日本の武器“オールコートバスケット”を貫き通して指揮を執った林ヘッドコーチ。(写真提供:fiba.com)

 8月17日~26日にオランダ・アムステルダムにて開催された「第2回FIBA U-17女子世界選手権」。優勝したのはアメリカ。2位スペイン、3位カナダという成績だった。この大会で日本は、女子アンダーカテゴリー史上初の世界4強入りを成し遂げた。これは2010年の第1回大会での5位を上回る、見事な成績である。

 出発前に林慎一郎ヘッドコーチは「12名の総力戦で、オールコートプレスで勝負したい」と語っていた。その言葉通り、日本は全試合でそのバスケットスタイルを貫いた。また、各国のヘッドコーチとメディアの選出による「大会ベスト5」には、中村優花(柴田女子)と馬瓜エブリン(桜花学園)の2人が選ばれた。優勝したアメリカから2名、2位のスペインから1名が選出されており、4位の日本から2名選ばれたのも、果敢なプレイが評価されたと言えるだろう。林慎一郎ヘッドコーチと選手に今大会を振り返って収穫点などを聞いてみた。

 日本チームは予選ラウンドでブラジル、オランダ、トルコを撃破し、第4戦では強豪スペインと最後まで競って4点差で逃げ切る好試合を見せた。この4連勝で日本のグループ1位が確定したため、第5戦のオーストラリア戦は決勝トーナメントへ向けて主力を休ませる作戦をとれた。その決勝トーナメントでは準々決勝でベルギーを倒して、初の4強入り。残念ながら準決勝では予選ラウンドで競り勝ったスペインに終始、主導権を握られて無念の敗退となり、3位決定戦は高さで勝るカナダに逆転負けを喫した。メダル獲得はならなかったが、日本はスピードとオールコート・プレスで堂々の存在感を示し続けた。

◆U17女子メンバー表
◆大会順位&MVP・ベスト5
◆大会特設サイト(日本バスケットボール協会)
◆大会公式サイト(FIBA)
 
 

ブラジル、オランダ、トルコに快勝して3連勝。チームが波に乗った!

初戦のブラジル戦に快勝してチームは波に乗った。#6馬瓜と#8山田(写真提供:fiba.com)

――出発直前に十分な練習が積めずにオランダ入りしました。現地ではどのような準備をしましたか。

前回(2010年)のフランスでの第1回大会は、初戦にロシアにコテンパンにやられました。決勝トーナメントでは準々決勝でベルギーに敗れ、5-8位決定戦に回り、オーストラリア、ロシアに勝って5位に入りました。そうした経験があったので、とにかく初戦のブラジル戦に勝って勢いに乗りたいと思い、大会前に練習ゲームを組んでもらえるようにお願いをしました。

幸いヨーロッパ2位のベルギーと3ピリオドだけの練習ゲームをすることができました。そんな相手に十数点も勝ってしまい、「あれっ?」と驚いて、手応えをつかむことができました。それからトントンといった感じです。ベルギーと大会前に対戦できたことで、ヨーロッパの選手、スクリーンを多用するチームに少し慣れることができました。あとは国内合宿の時から「アジア予選から引き続いて12名で戦うぞ」ということを選手たちにはきました。

――前回大会からの教訓として「初戦が大事だ」というのがあった訳ですね。

そうですね。今回、ベスト4に残れたのは、予選ラウンド第5戦でスペインに勝ったことも大きいのですが、初戦のブラジルに勝ったことで弾みがつき、2年前の大会を上回る成績につながったと思います。

――ブラジル戦は第2ピリオドで10点リードを奪い、その後もリードを保ったまま、92対71で快勝しました。ブラジルは大陸予選でアメリカと競っていて、先生はかなり警戒をしていました。ブラジルに対しての勝算はかなりあったのですか。

ブラジル対策は、大陸予選のビデオを見て、個々のマークマンの特徴、シュートがあるとかドライブがあるとかということを分析し、「ディフェンスをしっかり固めるぞ」という指示はしました。実は、ブラジルにあそこまで勝てるとは思っていなかったです。前半を10点ビハインドぐらいで競っていれば、後半に粘っていけばブラジルはさほど粘れる国民性ではないと想像していたので、「とにかく1試合を通して粘り強くやれ」と指示をしました。それが前半を10点もリードしたので、ハーフタームの時に「出来すぎだ」と選手に言ったぐらいです。私としては、逆に10点負けぐらいを想定していましたから(笑)。「相手は粘りがないはずだから、このまま突っ走れ!」と選手を送り出しました。

第2戦は地元・オランダとの対戦。プレスから相手ミスを誘って73対59で快勝した。17得点をマークした#8山田(写真提供:fiba.com)

――武器であるオールコートのプレスが効いて、それがオフェンスにもいい流れになったと言えますか。

そうですね。ディフェンスで相手を苦しめることでターンオーバーを誘い、リズムの悪いシュートを打たせることでリバウンドを取って走れたので、得点も伸びていきました。ボールを支配されるとブレークはなかなか出ませんから。その点は後半も相手にプレッシャーをかけてうまく逃げ切ることができました。相手のミスを誘っての展開、ハイリスク、ハイリターンですね(笑)。ロースコアの展開では絶対に勝機はないと思っていましたから。

――この初戦を勝ったことでチームが波に乗ったと言えますか。

それは言えますね。ブラジルも相当気合いが入っていたのですが、そこで勝ち切ることができました。ブラジルは結局、最下位になりました。あれは日本に1発目でやられて失速してしまったからです。逆にわれわれは、この勝利で乗っていくことができました。

――第2戦は地元オランダとの対戦。第1ピリオドで18対8と大きくリードし、第4ピリオドには20点差をつけるほどの快勝の試合になりました。

オランダは今回、予選ラウンドのキーを握っていたチームでした。地元ですから当然応援もすごくなるので、クロスゲームを予想していました。第1戦を見た限りはシュート力もありましたから。それが大きくリードした試合になりました。後半、メンバーを交代しても勝てるとは思ったのですが、前回大会も地元フランスが頑張って準優勝しているので、オランダもそうなる可能性を考えて、リーグ戦ではできるだけ点差をつけて勝っておきたいと思いました。

――リーグ戦でもつれた場合を考えてということですか。

はい。前回は決勝トーナメントに上がれるかどうかは、予選ラウンド5戦目のロシア対トルコ戦の結果次第で、得失点差で日本がトルコをわずかに上回ったので上がることができました。なので、予選ラウンドで得失点を争うことを想定したら、できるだけ点差をあけておきたいと思ったのです。

徹底して前から当たった日本のディフェンス。相手ミスを誘って試合の主導権を握った。トルコ戦にも勝利し3連勝した(写真提供:fiba.com)

――第3戦はトルコに83対75で勝利。どんな試合でしたか。

後半、苦しかった試合でした。前日のオランダ戦もこのトルコ戦も暑い日で、選手に疲れが出てきて身体が動かなかったのです。外国人の当たりの強いバスケットが続き、ずっとオールコートで当たっていますから、当然、疲労が出てきます。トルコ戦は第3ピリオドで逆転されたことで、選手が浮き足だっていました。第4ピリオドに入って再逆転しましたが、一進一退となって選手が焦っていたので、タムアウトをとって「大丈夫、1点勝てばいいんだから」と励ましました。

――足に疲れが出て競っている場面は相当きついと思います。チームを支えたのは誰でしたか。

中村優花ですね。あとは畠中春菜です。3年生のこの2人がそれぞれ自分の仕事をしっかりしてくれました。畠中が3ポイントを決め、中村がドライブからファウルを誘ってフリースローをもらい、きっちりとシュートを沈めてくれました。そういうところがチームを最後まで支えてくれました。

――ブラジル、オランダ、トルコと3連勝。出発前に「最初の3戦がカギになる」と言ったことがその通りになり、チームが波に乗ったと言えますね。

本当にうまくいったと思います。計算した訳ではないんですが……。“ゲームは生き物”ですから、こちらが計算したとおりにはいきませんが、今大会は本当にうまくいきました。
 

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