アジアカップ準優勝で得た経験と指針
「アジアカップ準優勝」の持つ意味

文/渡辺淳二  写真/一柳英男

日本は相手の強みを抑える粘り強いディフェンスを仕掛け、2大会連続のファイナルへと勝ち進んだ

若い選手が経験を積み、日本代表の「指針」を示せたアジアカップ。この継続こそが必要

◆FIBAアジアカップ順位&MVP・ベスト5
◆大会公式サイト(日本語)
◆大会公式サイト(FIBA ASIA)
◆日本代表特設サイト(日本バスケットボール協会)

 第4回FIBAアジアカップで男子日本代表は、前回大会に続く準優勝という結果を残した。予選ラウンドでカタール、チャイニーズ・タイペイ、そしてインドと3連勝を飾った日本は、4戦目のイランに逆転負けを喫し予選ラウンド2位通過。決勝ラウンドで、20歳前後の若手選手で構成された中国、さらにカタールとの再戦も制した日本は決勝で、「手ごたえを感じる名勝負」をイランと展開し2点差で敗れた。優勝チームであるイランにはアジア選手権への出場権が与えられ、続く順位の4チーム、日本、カタール、フィリピン、中国の所属するサブゾーン、つまり東アジアに2つ、湾岸と東南アジアにはアジア選手権への出場枠が一つずつ増えることになる。この結果、日本が来年の東アジア選手権を突破しアジア選手権に出場できる可能性はかなり高くなった――。

大学生、比江島慎と田中大貴の高い将来性

出場した時間は思い切りシュートを打ち、タイトなディフェンスを仕掛け、役割を果たした田中大貴

 もし、予選ラウンドと決勝でイランに喫した2敗が本番だったら、すなわち2014年世界選手権(スペイン開催)予選となるアジア選手権での敗戦だったら、「悔し過ぎる結果」に過ぎなかった。しかし今回のアジアカップにおける結果の持つ意味合いは少し違う。結果が求められつつ、今年度の選手育成および、来年以降に向けてのチーム強化の成果も問われたからだ。苦戦を強いられて辛勝だったインド戦をのぞく6試合で、鈴木貴美一ヘッドコーチ(以下鈴木HC)は、同じニュアンスのコメントを続けた。

「若い選手が勝負どころで活躍してくれたのがうれしかった」

 日本代表としては異例とも言える、大学生3名の最終メンバーへの大抜擢。その中から緒戦のカタール戦でまず、途中交代でコートに立ったのが比江島慎(青山学院大)だ。ドイツでプレイするポイントガード・石崎巧がチーム事情で代表の活動から離れたのに伴い、現在は控えのポイントガードとして起用されている比江島が言う。

「大事なところでミスしないようにし、行けるところはシュートまで持って行こうと。ヘッドコーチからは『のびのびやって攻めろ』と言われています」

 うまさを感じさせる1対1から中間距離の難しいシュートを沈めると、前半終了間際にはブザービーターの3ポイントシュートをアシスト。比江島からのパスを受けたのが、コートに立ったばかりの田中大貴(東海大)だ。13分の出場で2本の3ポイントを含む8得点。シュートミスもないそのプレイ内容の中身が濃かった。それまでの日本のシュートは、カタールの高さを意識して制限区域の外からのシュートに偏っていた。相手のディフェンス網をドライブで突破して、左手で決めたランニングシュートがチームに勢いをもたらしたのである。

「チャージングにならないと思ったので、思い切ってアタックしました。試合の後、ユニフォームをばっとつかまれたんですよね…」
 田中のユニフォームをつかみ、『シュートを決めたな』と、その活躍を称えたのはカタール代表のトーマス・ウィスマンHCだ。昨年度まで日本代表のヘッドコーチを務めていたウィスマンは、低調だったカタールのシュートに渋い表情を浮かべ、冗談混じりにこんなコメントを残した。

「日本のシューターが欲しかった」

桜木と竹内に偏っていたインサイドからの発展

最後まであきらめなかった粘りは、コートとベンチも一体化した姿勢から生まれていた

 3人目の大学生が、インサイドの永吉佑也(青山学院大)である。大会直前の練習中に右足に痛みが生じた橋本晃佑(東海大)に代わって緊急招集された。彼は結局、チャイニーズ・タイペイ戦の試合終了直前の、32秒の出場に止まった。永吉のパワーがどれだけ国際大会で通用するかにも興味はあったのだが、それは次の機会に回すとして、違和感を覚えたのがチャイニーズ・タイペイ戦では試合終了直前の1分の出場に終わった太田敦也の起用の仕方だった。鈴木HCが言う。

「(ジョーンズカップで大敗した)チャイニーズ・タイペイ北には絶対に勝ちたかったし、チームのリズムが悪かった。もう少し前(試合の序盤)に出していればよかったんですけどね」

 スタートから出場したインサイド陣は、竹内公輔と桜木ジェイアール。二人とも最初の2試合30分以上の出場で、ともに市岡ショーン(FIBAの規定により、パスポート名での登録名。JBLでは「ショーン・ヒンクリー」で登録)が10分と少しの出場時間でつないでいた。太田より市岡の状態のほうがいいと判断してのヘッドコーチの起用だったのだろうが、インサイドの「つなぎ(交代)」はさらに必要だと映った。疲労からか、ターンオーバー(※この試合で7つ)を繰り返す桜木に負担がかかり過ぎている…。前半を10点リードで折り返しながら、逆転負けを喫した予選ラウンドのイラン戦でも鈴木HCはこう語った。

「(格上の)イランに対して、ターンオーバー15本はダメです」

直前の参加ながら、チームに順応し、若手の良さを引き出した桜木ジェイアール

 その矛先はインサイド陣、特にこの試合でも6個のターンオーバーを記録した桜木らへと向いていた。だが、今大会に向けての強化の最終段階でチームに合流した桜木がプレイしやすい環境とは言えなかった。つまり彼に頼り過ぎているように見えたということだ。そこから一日の休息をはさんでの決勝ラウンドで少しずつ解消の兆しを見せる。中国戦では「自分のエネルギーをディフェンスとリバウンドに注いだ」と言う市岡が奮闘。特に、中国の期待のセンター#14ワン・ズェリン(214cm)のシュートをパワフルにブロックしたのが象徴的なワンシーンだ。もうすでに止めることが難しい若干18歳のワンは試合後、「このような(高い)レベルの大会は初めてなので、多くのことを学べました」と語っている。

 さらに準決勝のカタール戦では市岡だけでなく、太田がリバウンド、ルーズボール、そしてスクリーナーとして最高のつなぎをして決勝進出のために大きな仕事をやり遂げた。

「(竹内)公輔と(桜木)ジェイアールがずっと出ているので、1秒でも長く休ませたかった。そのためにディフェンスとリバウンド、必要な時にはファウルをしてでも相手を止めようと思いました」

 控えのセンター陣がいいつなぎを見せることで、桜木だけでなく竹内の負担も軽減され、プレイの精度が維持されるようになった。竹内と桜木、その控えとして太田と市岡。「4枚使えるので、決勝のイラン戦が楽しみです」と鈴木HCは、ペース配分のミスから試合終盤にトーンダウンしてしまった予選ラウンドのリベンジを誓っていた。
 

1 / 212