アジアカップから「アジアの今」を読みとる
底上げを図る時期に得た収穫。重要なのは今後への継続

文/小永吉陽子  写真/一柳英男

イランが初優勝。チーム再生期に苦しみながらの優勝だっただけに、喜びもひとしお。優勝を決めると国旗を掲げながらビクトリーラン

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各国強化事情が異なる中で、アジア選手権への土台作りと選手層の底上げを目指した大会

■アジア各国はアジアカップをどう捉えていたか
世界へつながるファーストステップ
目的意識を持ったチームの向上が見られた大会

イランの新鋭、21歳の#9モハンマド・ジャムシディ・ジャファルアバディ。運動能力が高い198㎝のSG。毎試合重要な場面で起用されることでシックスマンへと成長した

 アジアカップを各国はどのような位置づけで臨んでいたのだろうか。この大会は優勝国には来年のアジア選手権の出場権が与えられ、優勝国をのぞく上位4チームが所属するサブゾーンには、アジア選手権の出場枠が与えられる。いわば、来年に向けての土台を作る大会。だからこそ、各国とも思い切って来年のために多くの若手を起用し、キャリアある選手と組ませながらチームの底上げを図る国が多かった。

 A代表級の選手でチームを構成していたのは、カタール、フィリピン、チャイニーズ・タイペイ、レバノンだ。カタールとレバノンは昨年度から若手に切り替えていたところにベテラン選手を復活させて来年に備え、新しい帰化選手も試している。フィリピンは昨年のアジア選手権とはまったく違った顔ぶれで参戦。帰化選手のマーカス・ドーイット以外は「プロリーグでの活躍を見直して選出」(ビンセント・レイエスHC)したためであり、戦力的にはA代表だという。ただ、カタール、レバノン、フィリピンともに、この戦力での練習が短期間だったために、チームとしては粗削りだった。

 今大会の中で、チーム事情が他と異なっているのがロンドン・オリンピックに出場した中国だ。A代表は休養期間となり、今大会には「4年後のリオデジャネイロオリンピックを目指す若手選手」(ファン・ビンHC)でチームは構成され、次世代を担う平均20.6歳の選手たちが来日していた。

 また、7月のオリンピック世界最終予選に出場した韓国とヨルダンにいたっては、世界最終予選をもって今年度の代表活動を終了としたため、出場権を持っていながらも、大会への参加を辞退している(ヨルダンと韓国は8月のジョーンズカップには参加している。ヨルダンは暫定ヘッドコーチと帰化選手のラシーム・ライトを含む若手選手という布陣で参加。韓国はKBL優勝チームの安養KGCが参加)。夏にオリンピック本戦や予選を戦った国にとっては、9月に新体制で臨むことが難しいことも浮き彫りにされた。

カタールの新しい帰化選手のクリントン・フィノール・ジョンソンⅢは、NBA経験を持つポイントガード。カタールは昨年のアジア選手権で帰化の疑いがあった選手たちの「出生に関する書類」を提出せずに、登録が6人しか認められない失態を犯した。そこからのチーム再生だった

 中国A代表、ヨルダン、韓国と、昨年のアジア選手権上位3チームが参加しなかったアジアカップだが、そんな状況下でもアジアカップに出場した国々からは、ただならぬ熱気が感じられた。それはどこの国も今大会を通過点としながらも、目的意識をしっかりと持って臨んでいたからだ。優勝したイランのエース、サマッド・ニックハバ・ハラミは優勝記者会見でこのように語っていた。

「この大会に参加する前に多くの人から言われていたのは、この大会は比較的若い選手が出たり、必ずしもベストチームが出るわけではないから簡単なトーナメントになるだろうと言われていたけど、実際に参加してみて、最初の試合の20分でみんなが言ったことはすべて間違っている。もしくは、この大会に関してはそれは違うと確信した。結果論からいって素晴らしい大会になったし、レベルの高い大会だった」

 バハラミのコメントから読み取れることは、いまやアジアを勝ち抜くことは容易ではないということ。オリンピックに出場した中国でさえ、アジアでダントツの時代は終わっている。前回アジア選手権(ロンドンオリンピック予選)の決勝において、中国とヨルダンの差はたった「1点」。アジアはもはや戦国時代に突入していると同時に、アジアの多くの国が世界へ飛び出すチャンスをつかめる時代になったのだ。各国ともにこのアジアカップに出場して直近のアジアの傾向を知り、一試合でも多く経験を積んでチームの土台を作り、来年のアジア選手権につなげたい思惑が、東京の地でヒートアップした理由だろう。

 そして、「レベルの高い大会だった」とキャプテンみずからが体感した中で真摯に取り組んでいたイランこそが、“再生”に充てたこの大会で「経験と結果」の両方を得たチームになった。

 イランは2007年、2009年のアジア選手権で連覇しているが、前回の2011年大会は過去最強メンバーを擁しながらも、準々決勝でヨルダンに足元をすくわれて5位に終わっている。今大会はアジア制覇を経験しているメンバーと、高校生を含めた若手でチームを構成。若手を積極的に起用したために予選リーグでは劣勢に立たされた試合が多かったが、要所ではアジア制覇を経験しているキャリア組の踏ん張りによって優勝へとたどりついた。新生チームで結果を残したことで選手層の底上げがされ、このアジアカップでいちばん成長を遂げたチームといえるだろう。
 
 

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