エースの系譜<2>
『変わりたいもの』と『変わってはいけないもの』

文・松原貴実  写真/一柳英男

エースの系譜<2>金丸晃輔――『変わりたいもの』と『変わってはいけないもの』

「ディフェンスを頑張ってリズムを作ってこそ、
自分のシュートも生きてくるのだと実感できた大会でした」

天性のスコアラー。真のエースになるべく、アジアカップを通して自分の進むべき道を見つけた。決勝のイラン戦では31分出場し、3Pシュート4/6本含む16得点の活躍

 広いシュートレンジを持ち、一度波に乗れば驚くべき高確率で得点を量産することから「スコアマシーン」の異名を取る。執拗なディフェンスに体勢を崩しながらも鮮やかに決め切る1本に感嘆の声を上げたファンも少なくないだろう。だが、代表チームとして世界の舞台に立った時、はっきりと見えてきた課題と進むべき道。これまでオフェンス面だけがクローズアップされてきた天性のスコアラーは、真のエースを目指して、今、変わろうとしている。

 金丸晃輔のシューターとしての経歴は実に華々しい。福岡大附大濠高では早々とその頭角を現し、2年生のインターハイではチームの得点源として準優勝に貢献した。翌年にはアジアジュニア選手権(現U18アジア選手権)の代表メンバーにも選出され、明治大に進むと、2年生で関東大学リーグ、インカレでそれぞれ得点王を受賞。3年生で出場したユニバーシアード大会では平均29.8得点という驚異的な数字で大会得点王に輝いた。初めてA代表入りしたのはその年のウィリアム・ジョーンズカップ。13分出場したレバノン戦で17得点とニューフェイスらしからぬ活躍を見せ、さらに大学最後のインカレは見事3ポイント王で締めくくった。パナソニックに入社した昨年はユニバーシアード大会、東アジア選手権大会で世界の舞台を踏み、同時にJBL新人王を受賞。ざっと列記しただけで、非凡な資質を備えたシューターの姿が浮かび上がってくる。

「執拗にマークされてもひるまず打ち続け、タフショットも決める。ルーキーシーズンにあれだけできるというのは、やはり並のシューターではないということでしょう」(パナソニック・清水良規ヘッドコーチ)

 だが、合格点をもらったオフェンス力に対し、自らが「課題が多い」とするディフェンス面に関してはまだまだ力不足を感じる1年でもあった。
 
 
「点が取れてもディフェンスが悪ければ(自分のポジションが)穴になるし、信頼されなければプレータイムも短くなる。ディフェンスは才能というより、やるかやらないかというメンタルの部分も大きいから、それをやり通すということ、そのディフェンスをオフェンスにつなげること。今年はそれを自分に課しています」

 2年目のシーズンを前にそう語っていた金丸だが、若手主体の新生日本代表メンバーとして臨んだ8月のウィリアム・ジョーンズカップでは自分の未熟さを痛感したという。

「パワーとかファンダメンタルとか全部負けていて、それが気持ちにまで影響してプレーが消極的になってしまった。自分のプレーが出せないまま大会が終わってしまった感じです。本当に全然だめでした」

芽生えてきたディフェンスの意識が、金丸を成長させている。決勝のイラン戦では、同じシューターの#10アファグと激しい攻防を繰り広げた

 それからわずか1ヶ月後に迎えたアジアカップ。それは金丸にとって自分を立て直し、ジョーンズカップの苦い思いを払拭するチャンスでもあったはずだ。

「今年はこの大会を目標にしてきたし、どんな場面でも積極的にプレーすることを忘れず、結果を残したい。気力は充実しています」

 その言葉に違わず、スターティングメンバーとしてコートに立った初戦(対カータール)から決勝のイラン戦まで7試合すべて二桁得点、中でも予選ラウンド3戦目(対インド)では1Qだけで5本の3Pシュートを沈め、26得点の活躍で頼もしいエースぶりをアピールした。さらに成長の跡が感じられたのは『しっかり足で付くディフェンス』。

「周りはどう思っているかわかりませんが、(今大会のディフェンスは)自分ではまぁいい方かなと思っています。負けずに気持ちを出し切ってやっているし、ジョーンズカップの時とは全然違います」

「変わりたい」と思っていたもの、「変わらねば」と求めていたものが、アジアカップの舞台で徐々に形になってきたという手ごたえがある。

「今までは(気持ちも)オフェンスから入っていたけど、今はディフェンスから入らないと自分の良さが出ないということがわかってきました。ディフェンスを頑張ってリズムを作っていくことで、自分のシュートも生きてくるのだと実感できたというか」

 ディフェンスからチームのリズムを作ることで、自分のシュートタイミングを的確につかむ。ゲームの流れの中で打つべき場面、打たなければならない場面では躊躇せず打つ。

「この大会では、それが自分なりにできていたように思います」

 とはいえ、それは一つの満足。その先に続く道がまだ長いことは十分に承知している。

「これから身に付けなければたくさんあります。たとえば、自分は同じシューターとして川村(卓也)さんを尊敬しているんですが、川村さんはシュートだけじゃなくてパスもうまいですよね。周りを活かす絶妙なパスは本当にすごい。自分でシュートにいくタイミングやひきつけてパスを出すタイミングなんかはいつもビデオで勉強させてもらっています」

アジアカップではスタメンに抜擢。さらなる高みを目指すステップアップの大会となった

 ただし、自分が目指す『エース像』は誰かと比べるものではない。自分だからこそ求められ、自分だからこそ実行できる力。川村が故障で外れた今回の代表チームの中で、その川村に代わって自分がやらなくてはという意識はあったのか? という問いには「川村さんがいないから、自分が代わりに出るというのは納得できません。(あくまでも)自分の実力を認めてもらって出ているのだと思いたいです」と、きっぱり言い切った。

 その一言に込められたシューターとしての自負。

「普段はマイペースでのんびりしているように見えますが、バスケットだけは負けず嫌いになります(笑) どれだけガツガツ守られても絶対負けたくない」

 それは「変わりたい」と思う自分の中にある「変わってはならないもの」。アジアカップで再確認できた進むべき道に、「今、迷いはないです」。