トヨタ自動車 vs JX
“ストップ・ザ・JX”を果たしたトヨタ、自主性への脱皮

文/小永吉陽子  写真/一柳英男

“ストップ・ザ・JX”を果たしたトヨタ、自主性への脱皮

「JXに勝ちたいじゃなく、勝とう!」――トヨタ自動車・久手堅笑美
 
 
90-69――。
予想外の大差でトヨタ自動車がJXを下して、オールジャパン初優勝を飾った。
トヨタの初優勝までの道のり、そして、大差の勝利へと導いた背景にあったものは。
また、5連覇を狙っていた女王・JXが敗れた理由は何か。2013年、オールジャパン女子ファイナルを追う。

 
 

出足の3ポイント2連発で“ハマった”トヨタの勢い

1Qは100%の確率でシュートを決めたルーキーの栗原三佳。出足の2発の3ポイント、1Qの14得点でチームを勢いに乗せた

 トヨタ自動車が21点もの大差をつけて初優勝を遂げた。オールジャパンでは3年ぶり2度目、リーグを含めれば5度目のファイナル進出でようやくつかんだ栄冠だった。しかし、それは言い換えれば、大会5連覇の道を突き進んでいた最強軍団JXが、ファイナルで完敗したことでもある。

 Wリーグ、レギュラーシーズン22戦全勝。今季のJXは、184㎝の間宮佑佳が5番、足の疲労骨折から完全復帰した192㎝の渡嘉敷来夢が4番を務め、抜群の高さを誇るインサイドの攻防はどこにも止めらなかった。また、機動力で引っかき回すシューター、岡本彩也花の3ポイントという武器も加わり、「このメンバーが走らなかったらもったいない」とのモットーを掲げた新任の佐藤清美ヘッドコーチ(以下HC)のもと、今まで以上に走るカラーを打ち出していた。コンディションは万全ではないながらも、足の甲の疲労骨折によるリハビリから11月に復帰した大神雄子を6番手に据えたことも安心感を生み、これら若返ったメンバーを操る司令塔の吉田亜沙美みずからが「今まで以上に走るバスケが楽しい」と、若く新しいJXをアピールしていた。

 今季、大黒柱へと成長を遂げている間宮が準々決勝で右膝の内側靭帯を痛めるアクシデントにも、準決勝のシャンソン化粧品相手には、77-51で完封する強さを発揮。豊富な選手層で大会を乗り切るものと思われた。

 しかし、勝ったのは90点をもぎ取ったトヨタ自動車だった。前半で48-31。17点ものリードを奪ったトヨタは、3Qに一時は7点差まで詰め寄られるものの、一度も主導権を渡すことなく、走り切ったのだ。

「これ、うそじゃないよね?」「実感が沸かない」――JXに完勝しても、信じられないという言葉を繰り返していたトヨタの選手たち。「勝つなら接戦かと思っていた」との言葉も多く聞こえた。そんな中で冷静に分析していたのは、JXの前身ジャパンエナジーと富士通という2チームで優勝を経験し、今大会もチームを牽引した34歳のエース、矢野良子だった。

「私たちのオフェンスがJXのディフェンスに対して“ハマった”という言い方があっているのかもしれない」

6番手だがチームのエース。チームハイの24得点、8アシストを記録した矢野良子

 トヨタのオフェンスは、ルーキー栗原三佳が出足に決めた2連発の3ポイントで勢いに乗った。開始4分半で15-5とすでに主導権を握り、栗原は1Qだけで3ポイント4/4本、2点1/1本とパーフェクトで14得点(トータル20点)をマークして序盤の流れを作った。ディフェンスでは、「この日のためにリーグ戦で一度も使わずに準備してきた」(後藤HC)という4種類のディフェンスでJXの足を止めた。

 4種類とは、ガード陣が前からプレッシャーをかけ、インサイドをダブルチームやトリプルチームで抑える運動量の多い2種類のトラップディフェンスに、ゾーンとマンツーマンのチェンジングの2種類。ディフェンスの足が動くことでオフェンスにも連動し、ゲームは様々な効果が線になって結びついていった。

 司令塔の久手堅笑美がベンチに下がった時間帯には、高校時代にポイントガードを務めていた川原麻耶がつないで乗り切った。これは、久手堅が背中と腰を痛めて10月中旬から欠場していたリーグ戦でも試していたことだった。これまで大きな試合になると、久手堅の控えがいないことがトヨタの懸念材料のひとつだったが、久手堅が休めたことは、4Qの出足のスティールからの速攻や、ドライブからの展開といった脚を使った攻撃につながっている。

 JXが追い上げてきた場面では矢野がベテランらしく流れを読んで得点を重ね、相手のリズムになりかけるのをことごとく断ち切った。池田麻美は体を張ってチームディフェンスのルールを遂行することで、崩れないトヨタの象徴となっていた。

 対してJXは、トヨタのスクリーンプレーからの連動性ある攻めに一人一人のピックアップが遅れ、ディフェンスのローテーションが悪かった。その隙を見逃さなかったトヨタが、前半だけで10本、試合を通して15本もの3ポイントを浴びせた。その確率は驚異の46.9%。まさに“ハマった”猛攻は、終わってみれば21点という大差をつけていた。
 

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