「メンタリティー」の視点から女子代表を総括
女武者・巴御前のように――
サムライと化した女子代表を見たい!

文・写真/三上 太  Text ・ Photo/Futoshi Mikami


アジア選手権3位──。
3位決定戦ではチャイニーズ・タイペイを圧倒したが、韓国と中国に敗れた日本は目標の優勝には届かず、
ロンドンオリンピックのチケットを獲得することができなかった。
中川文一HCは常に「戦うサムライ」の存在を口にしていたが、日本は戦うサムライ集団にはなりきれなかった。
課題にあげられた「メンタリティー」という点から大会を総括する。

 

国際舞台で戦えるサムライがほしい

準決勝では激しいオールコートプレスで反撃。この向かっていく強い気持ちを前半から出していきたい

 ロンドン・オリンピック出場をかけた「第24回FIBAアジア女子バスケットボール選手権大会」。1970年にマレーシアで行われた第3回大会以来の優勝で、オリンピックの出場権を得ようとした女子日本代表だったが、結局3位という成績に終わった。来年6月に開催される世界最終予選への出場権を得る最低限の結果は手にしたものの、やはり満足のいくものではない。もちろん戦って敗れたわけなので悲観する必要はないが、それでも、と思わずにはいられない。

 敗因を探ればさまざまなものが噴出してきて、そこから新たな課題も浮き彫りにされるだろう。新たな課題だけではない。日本にとっては、いまだにクリアにならない「リバウンド」といった古くからの課題もある。それらを一つひとつ丁寧に取り除いていかなければ、やはり日本がアジアの頂点に立つのは難しい。優勝した中国も、2位の韓国も、そしてチャイニーズ・タイペイ、レバノン、インドといった国々も同じように新旧の課題に取り組み、同じようにアジアの頂点を目指しているからだ。

 今大会最後のJAPAN REPORTは、女子日本代表のメンタリティーという観点から述べてみたい。

 最後の記者会見を終えても、中川文一ヘッドコーチの周りから記者は離れようとしない。記者会見では聞けない何かもっと深いコメントを中川ヘッドコーチから引き出そうとしているのだ。そのなかである記者がこう尋ねる――相手が格上になると日本の選手が引いているように見えるのですが、それについてはどう思いますか? と。

「確かにそれは気になります。髙田(真希)なんてその典型ですよね。自分でやれると思ったら今日のようにできるんですけど(3位決定戦のチャイニーズ・タイペイ戦。高田は両チームトップの25得点を上げている)、中国戦のようにちょっと無理かなと思うと引いてしまう。そういった強い相手にも戦う選手にならないといけない。戦う選手が大神(雄子)、吉田(亜沙美)だけでは…渡嘉敷(来夢)にも戦う選手になってほしい。そういう意味では長岡(萌映子)は戦う選手じゃないですかね。女子にこういうのもなんですけど、サムライにしていかないと…そういう選手がほしいし、増やさなければいけないと思っています」

渡嘉敷の高さは武器になった。ケガを完治させて来年は勝負したい

 戦うサムライがほしい――これは昨年11月に中国・広州で行われたアジア競技大会でも、中川ヘッドコーチが言っていたことだ。あれから約10カ月。その思いは選手にうまく伝わっていなかった。

「もちろんそれは個々の素質もあると思う。思うけど、高田などにはそういうことを本人に言ってやらなければいけない。『今日くらいできるんだから』とか『お前はセンターの核なんだから』と言ってやれば、もう少しやってくれると思う。今回はちょっとひるんだ感じがある。それは本人の成長の過程なのかもしれないけど、そのへんはうまく誘導して、自信を持たせてやりたい」

 これは高田に対してだけ言っているのではない。名前の挙がった髙田、渡嘉敷以外にも間宮佑圭にも言えること。つまり、今大会は一番相手と接触して戦わなければいけないインサイド陣が一番戦えていなかった。確かに中川ヘッドコーチが言うように彼女たちはまだ若く、成長過程の真っただ中にある。高田に関して言えば、昨年の世界選手権を終えてから、約半年のWリーグを通じて、間違いなく日本でトップクラスのセンターに成長している。そういう目で見れば、戦うサムライになるのも時間の問題なのかもしれない。

 ただ国際試合になったときだけ急にサムライに“変身”できるわけではない。普段の練習から――それは所属チームの練習だろうが、日本代表の強化合宿だろうが――意識して取り組まなければ変われないのだ。

日本代表が持つべきメンタリティーとは

初の代表戦で、度胸の良さを見せた高校生の長岡

 今大会を迎える直前の公開練習で、サムライに近いと言われたチーム最年少の長岡はこんなことを言っていた。

「言いすぎかもしれないけど、練習でもうまくプレイができなかったら情けないというよりも恥ずかしいですよね。イヤなんですよ、何でうまくできないんだって。日本代表で、周りの人がうまいからっていうのは理由にならないと思うんです。高校生だから仕方がないとも言われたくないし、だから諏訪(裕美)さんのほうがよかった、鈴木(あゆみ)さんのほうがよかったって言われるのもイヤだから、それなりに周りに認めさせることをしなければいけないと思っています」

 ともすると、高校生のくせに生意気な発言だと思われるかもしれない。だがそれは違う。それは日本代表の選手が世界と戦う上で最初に持つべきメンタリティーであり、主力チームの相手をするBチームにいた長岡はすでにそれを持っていたのだ。やる以上は同じチームメイトであっても絶対に負けたくない。練習であっても絶対に妥協を許さない。もちろんチームバスケットを標榜する日本代表においてチームの和は絶対的に大事だが、そこでプレイに妥協を許してしまったら、アジアを始めとした世界では絶対に勝てない。そのことを長岡は本能的にわかっていたのだろう。そしてそれを口だけではなく、今大会で体現してみせた。

 それはもちろん中川ヘッドコーチの言う「素質」なのかもしれないが、意識をすれば変えられることでもある。コートに入ったら、練習開始の笛がなったら、すべての選手はサムライのスイッチに切り替えるべきだ。誰にも負けたくないと思うだけでいい。チーム内で切磋琢磨することが結局はより高い質のバスケットにつながり、結果として真剣勝負の場での勝利にもつながるのだから。

 来年6月の世界最終予選を前に、来月30日からは第13回Wリーグが始まる。そこに高校生の長岡はいないが、日本代表であるかないかにかかわらず、すべての選手たちに、“大和撫子(やまとなでしこ)”なんて美称ではなく、女性であっても「平家物語」に出てくる巴御前(ともえごぜん)のように“女武者”の姿勢で戦ってもらいたい。リーグの戦いが激しくなればなるほど、女子日本代表はサムライの集団になっていく。