アジア女子4強のクラブチームが激突!
国際大会への競争力強化を目指して設立された「AWC」

文・写真/小永吉陽子

アジアナンバーワンクラブの座をかけて戦った「Asia W-Championship」

国際大会への競争力強化を目指して設立されたAsia W-Championship

日本に惨敗した五輪予選後、再建に着手し始めた韓国の今

「国際大会の経験ある選手が少ないが開催国のプライドを持って戦いたい」と語っていたウィ・ソンオ監督。リーグ最下位からの優勝を果たしたウリ銀行のスタミナは国際大会でも際立っていた

 初の試みであるアジアWチャンピオンシップが韓国・龍仁(ヨンイン)市で開催された。日本、韓国、中国、チャイニーズ・タイペイのクラブチームチャンピオンが集結し、アジア女王を決める大会だ。実質、アジアは今大会に参戦した東アジア4カ国がリードしており、この大会で優勝したチームが、Wリーグのアジアチャンピオンという位置づけとなる。

 開催にあったっては、日本と韓国の間で2008年まで開催されていた「日韓Wリーグチャンピオンシップ」(WJBLとWKBL優勝チームが激突してチャンピオンを決める大会)の復活が検討されていた背景があった。そんな中で、アジアの4強を一同に揃えた大会開催を実現できたのは、開催地・韓国の尽力が大きい。

 韓国女子バスケットボール界は今、大きく変わり始めようとしている。

 昨年6月、ロンドン行きの切符をかけたオリンピック最終予選。残り1枚の切符をかけて、日本と韓国は準決勝という名の敗者復活戦で対戦した。日本はオリンピック出場のためにWリーグベスト4(JX、トヨタ、デンソー)のコーチングスタッフの力を集結し、再構築したディフェンスと走力で韓国を79-51で圧倒した。韓国は当時、代表のヘッドコーチ就任問題や選手選考で揉めていた背景があったにせよ、結束力に欠ける脆さを露呈。近年、大きく勝ち越していた日本に対して惨敗を喫したことは、強化体制の立て直しを図るのに十分な理由だった。

 再建への行動は迅速だった。WKBLは2007年シーズンに廃止して以来「人気回復と競技力の向上を目的に」(WKBL)、5年シーズンぶりとなる外国人選手の導入を決定。急遽決定したために、本来ならリクルートや契約問題で翌シーズンからの施行になるところを、11月の3ラウンドから導入に踏み切る強行策を取った。またシーズン途中には、女子バスケの発展を望んでプロとアマ(大学生)が競い合うチャレンジカップも創設している。

 現在、韓国にて充電中のチョン・ヘイル(前トヨタ自動車ヘッドコーチ)氏によれば、韓国女子が次々と改革を実行しているのは、チェ・ギョンファン氏が今年度よりWKBLの総裁に就任したことが影響しているという。

「行動力のある総裁が決断力を持って新しい試みを次々に進めており、それがいい方向へと進んでいる。さらに今回は国際大会を開いたことで、国内のファンに女子バスケに関心を持ってもらうことができ、発展への契機になる」との見解を示している。チェ・ギョンファン総裁はアジアWチャンピオンシップの設立に向けてこのような決意を語っている。

「今大会は国際大会の競争力を強化するため、WKBLの積極的な意志が具体的な結果として実ったものです。日本、中国、台湾アジア4カ国をつなぐ女子リーグの発展と交流、ひいては世界へ飛躍を図るためにこの大会を創設しました」

 WKBL改革1年目の成果は、アジア4強戦においてウリ銀行の優勝のという形で現れた韓国。今後どのような強化策が進められいくのか、ライバル国の動きに注目したい。

 
 
日本では気づけなかった“インサイドアウト”の効能

3月のファイナルからフォワードの高橋礼華の動きが効いてきたJX-ENEOS。アウトサイドの攻めをどう絡めて戦うかは今後の課題

 呼びかけは韓国から始まった大会だったとはいえ、国際大会への競争力強化を謳ったアジアナンバーワンクラブ決定戦は、日本にとっても有意義なものであった。中国の高さとパワー、韓国の組織力、台湾のアグレッシブさなど、各国特有のゲームテンポと当たりの強さを経験できたからだ。

 これまでのJX-ENEOSは、日本ではどんなにディフェンスに苦しめられても、高さと速さで優位に立って勝つことができた。その結果がWリーグ5連覇である。しかし、アジアとはいえ、一歩でも国外に出れば、様々なプレースタイルがぶつかり合い、高さでも速さでも簡単に主導権を握らせてもらうことはできない。

 高さのある中国に対して、自分たちの強みである走力で接戦をモノにしたことは自信になったが、ウリ銀行には日本で味わう以上に厳しくインサイドへのダブルチームを仕掛けられ、効果的に内外角を使いこなす組織力に敗れた。JX-ENEOSは、インサイドが機能しない時間帯はアウトサイドを中心に展開し、どちらか一辺倒の攻めに偏った。ここで“インサイドアウト”の駆け引きができてこそ、渡嘉敷と間宮の高さが生きてくる。ウリ銀行の試合巧者ぶり、競技調整力から学ぶべきことが多い試合だった。

「日本ではもっとインサイドを使って攻められるけど、ウリ銀行相手にはなかなかうまくいかなかった。もう少し走った中でバリエーションを増やした戦いをしなければならない。これはJX-ENEOSでも、日本代表でも同じことが言えると思います」(大神)

「今まではケガのために代表を辞退していたので(2011年アジア選手権は出場したが、足の疲労骨折のために万全なコンディションでは臨めなかった)この大会でアジアの強豪と試合をしてみて、国際大会の当たりの強さを改めて実感しました。リバウンドは通用したけれどファウルが混んでしまい、ブロックされたのもはじめての経験でした。この大会を通じて、もっと上の(実力を持つ)選手たちと対戦したいという意欲が沸いてきました」(渡嘉敷)

 国内では味わえないフィジカルコンタクトの中で、手痛い一敗を喫したことが、大会に参加した最大の意義でもあった。アジアで苦戦したJX-ENEOSが、この大会で得た当たりの強さと対応力をWリーグに持ち帰って実戦で出すことができれば、それに追いつこうとするWリーグ全体も底上げされていく。

 来年度に行われる第2回大会は日本開催の予定で進められている。意義のあったこの大会を継続し、WJBL各チームやファンが国際競争力を高める戦いを目の当たりにしてこそ、さらなる発展をしていくことができる。