インターハイ2015
夏を制して得た進化のための「気づき」と「高校界への提言」

文・写真/小永吉陽子

守備範囲の広さと運動量あるディフェンスで相手を苦しめた

集中力に欠け、甘さが目立つ試合展開に反省

誰かが欠けても誰かが補うチーム力を発揮した明成は王者にふさわしかった。佐藤コーチもチームの成長は認めている。しかし大会を通しての戦い方としては、優勝の喜び以上に「内容が悪く、甘さが目立つばかりだった」と厳しい評価を下している。

確かに選手の誰もが「決勝の後半に集中力を欠いてしまった」と反省点をあげていた。集中できない時間帯は、接戦となった準決勝以外、どの試合でも見受けられた。もちろん相手の奮闘もあってのことだが、「勝てた」と思った時点で足を止めてしまっていたのだ。

今大会の戦い方について違和感を感じ始めていたのは、準決と決勝で当たりがこなかったシューターの三上だ。

「八村と納見が1対1をしている時に自分は足が止まっていました。帝京長岡戦では3ポイントが決まってからはいろんなプレーができたんですけど、3ポイントが決まらなくても他の仕事をやらなきゃいけませんでした。これからは八村や納見対策が増えてくると思うので、そんな時は自分もフィニッシュを狙うだけではなくて、パッシングでズレを作ったり、引きつけてパスをさばいたり、相手をよく見てゲームを作れるように、もっと練習から研究していこうと思います。自分がこのままではチーム力は上がりません」

もう一人、試合を客観的に分析していたのが、今大会はマネージャー登録として仕事をした増子だ。佐藤コーチの横に座って注意深く指示を聞きながら、「もっと速く走れるし、ルーズボールで負けているから相手に流れがいってしまう」と、ベンチからアドバイスを送っていた。まさしく、これまで増子が担っていた “ハッスル” 不足がメリハリのない攻撃になってしまったところもあるだろう。悲願の初優勝を遂げておきながらこれだけの注文が出るのも、2年生チームで日本一になったがゆえ、この1年間はさらなる成長を求めてのことだ。佐藤コーチは言う。

「バスケットは内容があってこそ面白さを追求できるもの。たとえば、今の留学生たちは10年前と違って、1年生の頃から身体能力ある選手がやって来るが、その留学生を守るときにロブパスを入れられないように、ペイントエリアにいる3秒間をどうやって守るのかを突き詰めたバスケットを高校生の段階からしていかないと、日本のレベルは上がっていかない。単に体格勝負やシュートが当たっただけで勝敗が決まるようなバスケットをしていては、いつまでたっても諸外国に追いつかない。うちのチームはそういった“ゲームを作る”部分がまだ足りないのです」

「身体能力の高い留学生が大勢いる今をチャレンジととらえ
高校生の段階で将来に通じるゲーム作りを学んでいかなくてはならない」(佐藤コーチ)

「増子の分も」と仲間はチームプレーを展開。マネージャーとして仕事をした増子は「ベンチにいるだけでナイスプレー」(佐藤コーチ)と仲間を支えた

佐藤コーチの言葉は、対応力をテーマとしている自チームへの挑戦であり、また言い換えれば、留学生をも凌駕してしまう八村に対し、仕掛けるにくるチームが少ないことへの提言であろう。

戦い方を研究し、成果を出し合ってこそ、指導者も選手も伸びていく。佐藤コーチもそうした挑戦の中で気づきを得ていつの時代もチーム作りをしてきた。明成は八村一人だけの力ではなく、全員の運動量で留学生を抑えにかかる。果たしてそうした工夫を他のチームが出しているかどうか。明成にしても、インサイドの留学生を警戒するあまり、外から安易に打たれすぎる展開をなくすことが課題でもある。

インターハイ後の明成は、全国から様々なチームを招いてゲームをこなす夏休み恒例のキャンプを開催した。今年は台湾1位の松山高中が来日し、日本の高校生たちとたくさんの交流を図っていた。

そんなキャンプの中でいちばん叱責を受けていたのはエースの八村と納見だった。納見に対しては速さと駆け引きのゲームテンポを、八村に対してはディフェンスでさらに貢献することを指摘。U17世界選手権を経験した二人への要求は誰よりも高い。それは、高校で終わりではないからだ。

「インターハイは全国新人大会のようなもの。今大会は去年からの経験で勝たせてもらったのだと思います。ウインターカップに向けては戦える選手をもっと増やし、形にハマらずに対応する激しくも面白いバスケを目指していきたい」(佐藤コーチ)

八村塁という超高校級を擁しているからこそ挑戦できる戦い方があり、まだまだチームとして進化できるからこそ、冬に向けてさらなるバージョンアップを目指す。
 
 
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