中国代表の戦力分析
世代交代に踏み切った名将率いる“超新生”中国

アジアのライバル国を探る
中国の大幅な若返りにより、戦国模様の大会に。
日本にも大いなるチャンスあり!

文・写真/小永吉陽子
 
 
 今大会も覇権を競うのは日本を含め、中国、韓国、チャイニーズ・タイペイのアジア4強に絞られる。その中で今回は、どこの国にもチャンスがある大会だといえる。アジアの女王・中国がロンドンオ五輪終了後の今年、一気に若返りに着手したからだ。韓国はベテラン選手が牽引し、得点力あるフォワード陣が強力で選手層は厚いが、ケガ人が多いため始動が2ヵ月前からと、他の国より出遅れたうえでチームを作っている。チャイニーズ・タイペイは名門・国泰人寿(キャセイライフ)を主体とし、息が合ったプレーで10月の東アジア競技大会では日本を下したが、若手の中国には敗れている。

 日本はスピードと走力を生かし、渡嘉敷、王、間宮の3人を揃えて過去にない高さを持つチームになった。しかし、東アジア競技大会では「インサイドアウトがうまく機能せず、走れないジレンマがあった」(大神)と、身体にキレがなく全体的に重たいゲーム運びを露呈してしまった。実戦を積むという点では実りある大会だったが、1ヵ月間に国際大会を2つ迎え、ピークの持って行き方の難しさに直面しているところだ。本番では、さらなるアグレッシブなディフェンスをすることで走る展開へと持ち込みたい。

 注目は初戦でいきなり対戦する中国vs韓国。両チームの戦いぶりが大会の行方を占うだろう。アジアのライバルたちのチーム構成を紹介する。

◆関連記事(2012.8 ロンドン五輪展望・中国女子代表)
ミャオ・リージェ&チェン・ナン全盛時代最後のオリンピック
 
 

中国 CHINA

世代交代に踏み切った“超新生”中国
“オリンピック請負人”トム・マーの手腕はいかに

大黒柱のチェン・ナン(197㎝、30歳)。大舞台をいくつも経験しているキャリアの持ち主

 中国は平均年齢23.5歳、1990年代生まれが7人という若さでバンコクに乗り込んでくる。

 ヘッドコーチは“オリンピック請負人”のトム・マー。2000年、自国開催のシドニー五輪で銅メダルに導いたのを始め、2004年のアテネ五輪では、決して強豪とはいえなかったニュージーランドを決勝トーナメントに進出させ、北京五輪では開催地の中国をプレッシャーがかかる中でベスト4へと躍進させた。さらにロンドン五輪では、弱小イギリスをヨーロッパの強豪相手に戦えるまでに押し上げた。さすがに、オリンピックでは決勝トーナメントには進出することはできなかったが、予選ラウンドではカナダとロシアに善戦し、銀メダルに輝いたフランスには3点差まで迫った。イギリスが世界の足元にも及ばなかったことを考えれば、大健闘の結果である。強固なディフェンスを武器に、4年に一度必ず結果を出す男、それがトム・マーである。

 中国代表の指揮官就任は二度目。アジア選手権では2005年にも優勝を果たしている(2007年は北京オリンピックの開催地枠を持っていたため、若手代表が出場し、トム・マー氏は采配は振るわなかった)

 こう紹介すると、中国は3年後のリオデジャネイロ五輪を目指すチームを名将が率いたように映るが、決して今大会を若手チームで勝負しようとしたわけではない。春先の始動時期には、ロンドン五輪で活躍したベテランや中堅たちも候補に含まれていたし、直前までベテラン勢の参戦を望む声が報道を賑わしていた。しかし、ケガや調整不足を理由に欠場することになり、結果として若手で臨むことになってしまったのだ。

 今大会を欠場するビッグネームは3人。得点とゲームメイクの両方をこなし、中国の精神的支柱であるミャオ・リージェ(178㎝、32歳)、ここ数年は体調が優れずに代表には選ばれていないが、国内ではミャオ・リージェに劣らないビッグネームのビェン・ラン(180㎝、27歳)、パワフルなフォワードのマー・ゾンユー(183㎝、30歳)。外角の得点源が揃って不在になった。

世代交代を目指しながらも、ジー・イェンイェン、ジャオ・シュアン、ガォ・ソンら五輪を経験したフォワード3人の得点力は魅力(写真はジー・イェンイェン)

 さらには、大会直前のエントリー変更により、ロンドン五輪で復活した強気のポイントガード、ソン・シャオユン(175㎝、31歳)の欠場が決まった。直前にエントリー変更した3人のうち、10月の東アジア競技大会で活躍した若手2選手を昇格させていることからも、今回は人選に苦労した様子がうかがえる。ソン・シャオユンは、薄かったガードの層を補ってロンドン五輪でも活躍しただけに痛手は計り知れない。

 そんな若返り中国の中で軸となるのは、ロンドン五輪に出場した4人。中でも#15チェン・ナンは、パワーとシュートのうまさを持ち併せたアジアナンバーワンのセンターといえるだろう。ロンドン五輪で得点源として浮上した#12ガォ・ソン、2年前のアジア選手権で彗星のように現れたフォワードの#8ジャオ・シュアン、2010~2012年に2シーズンにわたってWCBAレギュラーシーズンMVPを獲得している#7イー・ジェンジェンらのフォワード陣がカギを握るだろう。

 ちなみに、#7ジー・イェンイェンと#12ガォ・ソンは2シーズン前にWCBAでプレーしていた石川幸子がイチオシだったプレーヤー。その後、昨年のロンドン五輪メンバーに名を連ねたことからも、成長のあとがうかがえる。

 ロンドン五輪までの中国は、ベテランガードのミャオ・リージェとセンターの#15チェン・ナンが牽引するチームで、2人の2対2は崩れないアジアの壁だった。さらにロンドン五輪では、司令塔に30歳のシャオ・ソンユンを復帰させたことが功を奏して、ヨーロッパの強豪・チェコとトルコに勝利して決勝トーナメント進出を果たしている。たった1年前ながら、この世界に通用したチームは今や存在しない。一気にビッグネームが去った今大会は経験の浅さは否めず、絶対的な力を持つとはいえない。チームの軸であるセンターとフォワードを、手薄で若いガード陣が操ることができるのか。大型の若手を起用して成長の階段を登ることができるのか。トム・マーがどう仕上げてくるか、お手並み拝見である。
 
 
中国女子代表

ヘッドコーチ/TOM MAHER トム・マー(オーストラリア)

4 邱思玥 チゥ・スーユェ (177㎝/G/22歳/広東)
5 李 夢 リー・モン (182㎝/G/18歳/沈部)
6 陳暁佳 チェン・シャオジャ (177㎝/G/25歳/江蘇)
7 紀妍妍 ジー・イェンイェン (182㎝/F/28歳/黒竜江)
8 趙 爽 ジャオ・シュアン (182㎝/F/23歳/沈部)
9 程 鳳 チョン・フォン (186㎝/F/23歳/遼寧)
10 露 雯 ルー・ウェン (190㎝/F/23歳/八一)
11 劉佳岑 リュウ・ジャツェン (192㎝/C/24歳/黒竜江)
12 高 頌 ガォ・ソン (188㎝/F/21歳/黒竜江)
13 孫夢然 スン・モンラン (197㎝/C/21歳/八一)
14 黄紅枇 ファン・ホンピー (196㎝/C/24歳/広東)
15 陳 楠 チェン・ナン (197㎝/C/30歳/八一)

●平均身長/186.67㎝ ●平均年齢/23.5歳