韓国代表の戦力分析
屈辱からの再生――ベテラン&強力フォワード陣で臨む韓国

アジアのライバル国を探る
中国の大幅な若返りにより、戦国模様の大会に。
日本にも大いなるチャンスあり!

文・写真/小永吉陽子
 
 
 今大会も覇権を競うのは日本を含め、中国、韓国、チャイニーズ・タイペイのアジア4強に絞られる。その中で今回は、どこの国にもチャンスがある大会だといえる。アジアの女王・中国がロンドンオ五輪終了後の今年、一気に若返りに着手したからだ。韓国はベテラン選手が牽引し、得点力あるフォワード陣が強力で選手層は厚いが、ケガ人が多いため始動が2ヵ月前からと、他の国より出遅れたうえでチームを作っている。チャイニーズ・タイペイは名門・国泰人寿(キャセイライフ)を主体とし、息が合ったプレーで10月の東アジア競技大会では日本を下したが、若手の中国には敗れている。

 日本はスピードと走力を生かし、渡嘉敷、王、間宮の3人を揃えて過去にない高さを持つチームになった。しかし、東アジア競技大会では「インサイドアウトがうまく機能せず、走れないジレンマがあった」(大神)と、身体にキレがなく全体的に重たいゲーム運びを露呈してしまった。実戦を積むという点では実りある大会だったが、1ヵ月間に国際大会を2つ迎え、ピークの持って行き方の難しさに直面しているところだ。本番では、さらなるアグレッシブなディフェンスをすることで走る展開へと持ち込みたい。

 注目は初戦でいきなり対戦する中国vs韓国。両チームの戦いぶりが大会の行方を占うだろう。アジアのライバルたちのチーム構成を紹介する。
 
 

韓国 KOREA

ウリ銀行を最下位から優勝させた“執念の指揮官”ウィ・ソンウ率いる
ベテラン&強力フォワードチーム

文・写真/小永吉陽子

韓国のインサイドの要、ベテラン選手のシン・ジョンジャ。ミドルシュートとリバウンドを武器とする

 28点差の屈辱――韓国の再生はそこから始まった。

 昨年のロンドン五輪世界最終予選(OQT)にて、韓国は準決勝で日本に51-79、28点差の惨敗を喫した。昨年の韓国は代表チームのヘッドコーチと選手選考で揉め、ケガ人も多くてチーム作りの軸がブレていた。走力とスタミナで圧倒的な差をつけられた大敗は「トルコの惨事」と呼ばれた屈辱となり、6シーズンぶりにWKBLに外国人選手制度の導入に踏み切るほどの危機感をもたらした。シーズン直前に決定したにも関わらず、翌シーズンからではなく、リーグの3ラウンド目には受け入れ態勢が整う異例のスピード実施を行っている。

 また、今年の4月には日本、中国、韓国、台湾のクラブチームナンバーワンが集結した第一回「アジア Wチャンピオンシップ」の開催に尽力するなど、「国際競技力のアップのため」(WKBLチェ・ギョンファン総裁)に次々と改革を行っている。アジアWチャンピオンシップではウリ銀行が優勝。メンバー構成からいって前評判の高かったJXを、雑草集団と呼ばれたウリ銀行が下したのも、執念のディフェンスを披露したからこそ。韓国の底力は健在である。

 さらに韓国は、来年の自国開催(仁川市)のアジア競技大会をも見据えている。今年はA・B両代表を作り、B代表がジョーンズカップに出場し、全勝優勝をかっさらっていった。

 着々と改革を進めている韓国だが、毎年のことながら、ハードな練習が招くケガ人の多さだけはどうしようもなく、今回も候補として招集したメンバーがケガによって次々に脱落する事態に陥った。ケガ人が多かったことから、A代表のスタートは8月下旬からと、春先から活動していた国々と比べると出遅れた形になり、10月の東アジア競技大会の出場を見送っている。中国も日本も夏の間には一度、代表活動を解散して自チームに戻しているが、韓国の場合は2ヵ月間で集中して、一気にコンディションのピークを持ってくる強化で仕上げている。

 今大会をケガで見送ったビッグネームは、司令塔のチェ・ユナ(168㎝、28歳)。センターのハ・ウンジュ(202㎝、30歳)とチョン・ソンファ(186㎝)。3人とも昨年のオリンピック最終予選メンバーで、ここ数年の代表でも主軸となっている(ハ・ウンジュは昨年もメンバー入りはしていたが、ケガでプレーはしていなかった)。さらに、A・B代表を掛け持ちする成長著しいフォワードのカン・アジョンも負傷。これによって、候補メンバーに入ってなかったフォワードの#7イ・ヨナァ、ジョーンズカップで結果を残したガードの#4イ・スンアとセンターの#8クァク・ジュヨンを抜擢するなど、苦しい台所事情を抱えながら12名を結成した。

2011年アジア選手権から得点源として台頭したキム・ジョンウン。ドライブや3ポイントに勝負強い

 ベストメンバーが揃わなかった――とはいうものの、ベテラン勢と強力なフォワード陣の層の厚さには目を見張るものがある。

 キャリア組の筆頭は34歳のキャプテン、#5イ・ミソン。毎回どこかしら負傷しているが、常に代表に選ばれる信頼厚いクレバーなポイントガード。32歳のセンター、#15シン・ジョンジャは2年前のアジア選手権でベスト5を受賞し、韓国でもっとも信頼されるインサイドプレーヤー。勝負強い33歳のシューターの#10ピョン・ヨナはいつでも日本を苦しめる存在(これまで「ピョン・ヨンハ」と表記されてきた選手だが、発音はピョン・ヨナ)。そして今回、要注意なのが33歳のフォワード、#11イム・ヨンヒである。最下位だったウリ銀行を一気に優勝に持ち上げた主軸。かつてアメリカを沸かせた五輪金メダリスト、ティナ・トンプソンがチームに加入したのも優勝の要因だったが、#11イム・ヨンヒが崩れずにチームを支えていたからこそ。主役になれるここ一番の得点力と、地道に仕事をこなして脇役の役割も果たす貴重な戦力だ。

 またフォワード陣は“ファンタスティック5”と呼べるほどの層の厚さを持つ。韓国の将来を背負って立つ23歳の#6キム・ダンビと26歳の#13キム・ジョンウンの2人は、強力なドライブインと3ポイントを持つ得点源。また、先に名前をあげた#10ピョン・ヨナと#11イム・ヨンヒ、あとから合流した#7イ・ヨナァらベテランを含めたフォワード5人衆の得点が中心となっていくだろう。

 2年前の大村大会で世代交代に踏み切りながらも、その速度は他国に比べて緩やかだった。国内では「数年後の若手の選手層が心配」との声が上がっているが、選出された12人の名前だけを見れば、選手層は厚い。今回の問題点は、#5イ・ミソンと#12パク・へジンといった負傷を抱えているポイントガードたちが、豪華なフォワード陣を生かせるかどうか。その答えは、代表では新参ヘッドコーチながら、就任たった1年でウリ銀行を最下位から優勝に導いたウィ・ソンウHCのカラーである“執念深い”チームに仕上がっているかどうかだ。

 今年4月のアジアWチャンピオンシップで JXがウリ銀行を攻められなかった敗因は、スタミナで押してくるディフェンスに手こずったからだった。中国と日本よりも小さなインサイド陣のリバウンドの奮闘と、組織的な守備力を発揮できるかが、韓国の命運を握る。
 
 
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韓国女子代表

ヘッドコーチ/위성우 ウィ・ソンウ(新韓銀行)

4 이승아 イ・スンア (175㎝/G/21歳/ウリ銀行)
5 이미선 イ・ミソン (174㎝/G/34歳/サムソン生命)
6 김단비 キム・ダンビ (180㎝/F/23歳/新韓銀行)
7 이연화 イ・ヨナァ (176㎝/F/30歳/KDB生命)
8 곽주영 クァク・ジュヨン (185㎝/C/29歳/新韓銀行)
9 양지희 ヤン・ジヒ (185㎝/C/29歳/ウリ銀行)
10 변연하 ピョン・ヨナ (180㎝/F/33歳/KB国民銀行)
11 임영희 イム・ヨンヒ (178㎝/F/33歳/ウリ銀行)
12 박혜진 パク・へジン (178㎝/G/23歳/ウリ銀行)
13 김정은 キム・ジョンウン (180㎝/F/26歳/ハナ外換銀行)
14 강영숙 カン・ヨンスク (186㎝/C/32歳/KDB生命)
15 신정자 シン・ジョンジャ (185㎝/C/33歳/KDB生命)

●平均身長/180.17㎝  ●平均年齢/28.8歳