中国・武漢:予選ラウンド1位
予選ラウンドで中国に競り勝った大きな1勝。

足元に入るプレッシャー・ディフェンスで中国を苦しめた日本。相手のイライラを誘った

日本が予選ラウンドを1位で通過した。大会4日目の9月1日。
予選ラウンドのヤマ場である中国戦で、高さとパワーを誇る中国に57-56で1点差の勝利。
我慢のバスケットで粘り勝って、首位通過を決めた。
9月4日のセミファイナルは、チャイニーズ・タイペイ(予選ラウンド4位の)との対戦となる。
もう一方のセミファイナルは、中国(同2位)対韓国(同3位)のカード。
「オリンピック出場」という目標に向けて、いよいよチームに弾みがついてきた。
1点差で競り勝った中国戦を振り返ってみたい。

文/舟山緑  写真/小永吉陽子
 
 

「自分が全ての責任を取って決めてやる!」
吉田のリーダーとしての決意、勝利への執念が決勝点に。

中国戦の第4クォーター。日本はしぶとい粘りを見せて、中国を1点差で振り切った。決勝点を挙げたのはキャプテンの吉田亜沙美だった。

吉田のステップインから試合に入った日本。この1本でいい形でゲームに入ることができた

残り18秒のタイムアウト明けからのスローイン。ボールを受けた吉田が、トップから切れ込んでワンフェイクからディフェンスをかわし、ステップイン。吉田の身体が大きくジャンプして下からすくい上げるようなシュートが鮮やかに決まった。日本が57-56と逆転。時間は残り3.4秒。中国が再びタイムアウトを取って最後のワンチャンスに懸けたが、パスミスとなってタイムアップ。首位決戦となったこの大事な一戦を日本が1点差で勝利し、予選ラウンド1位通過を決めた。

残り18秒、タイムアウトでの内海知秀ヘッドコーチの指示は「吉田がボールを受けて、間宮(佑圭)がピックからダイブし、リフトした渡嘉敷(来夢)にパスを入れ、渡嘉敷のドライブで勝負」だった。だが、ベンチでその指示を聞きながら吉田は、「ここは自分で行く! 最後は自分で責任を取る!」と決めていたと言う。

「内海さんの指示は聞こえていましたが、無視しました(笑)。渡嘉敷にパスができたらしようと思っていましたが、すぐに右のスペースが空いたので迷わずにドライブ。相手がブロックにくるのは分かっていたから、ワンフェイクをかけ、それに見事に引っかかってくれたので、あとはステップインで決めるだけでした」(吉田)

吉田の言葉通り、中国の#8ジャン・ファン(188㎝)がフェイクに反応して大きくジャンプ。コースがあいたところを吉田が迷うことなくシュートに踏み込んだシーンだった。「このところシュートタッチがよく、すごくリラックスしてシュートに行けた」と話す吉田。「後半、決めなくてはいけないシュートをポロポロと落とし、チームに迷惑をかけたので、最後は責任を背負うつもりだった」と、強い決意をのぞかせた。

「最後は自分が責任を取る!」という吉田の言葉に、キャプテンとしての強い思いと勝利へのあくなき執念が宿っていた。1点差を追う緊迫したこの場面で、まったく慌てることなく状況をよく把握し、冷静に自らのシュートを演出した吉田。まさに彼女の真骨頂のようなワンプレーだった。
 
 

よくやく自分らしいプレーが出てきた渡嘉敷
「考え過ぎず、自分の好きなようにプレーした」

シュートタッチが戻りつつある渡嘉敷来夢。思い切りのいいプレーがようやく復活してきた

エース・渡嘉敷来夢にようやくエンジンがかかってきた。初戦の韓国戦も前日のチャイニーズ・タイペイ戦でもチームプレーがイマイチかみあわず、本人も非常にもどかしさを感じていた。しかし、この中国戦は吹っ切れたようにゴールに向かい、得意のドライブでもバスカンになるプレーを見せるなど、本来の持ち味がようやく戻ってきた感じだ。第1クォーターでジャンプショットが2本決まって、いいゲームの入り方もできた。ゴール下を何本か落としたが、中国の高さとパワーにひるむことなく、積極果敢なプレーでチームハイの19得点をマークした。

「今日は何も考えないで、自分の好きなようにプレーしました。それが自分にとっても気持ち的に楽なので。考え過ぎてしまうと身体が止まってしまうので、何も考えず、自分勝手というか、言い方は悪いけれど、好きなようにやりました」(渡嘉敷)

吹っ切れた要因は何だったのか。渡嘉敷は「ここまでの3戦は“形に”はまってしまっていました。誰かにスクリーンをかけたり、パスして何かをしなくっちゃと考え過ぎてしまっていた」と分析する。

WNBAへの挑戦によって代表合宿に参加できず、チームと合流したのが出発の2日前。チームのフォーメーションをまだ十分に覚え切れていない中、チームプレーを尊重するあまり、自分のプレーをどう出していけばいいのか、踏ん切りがつかないでいた。だが、この中国戦は、「考え過ぎると自分のプレーが出せない」ことにようやく気づき、自ら吹っ切ったと言える。

「自分勝手なプレー」と渡嘉敷は言ったが、そのアグレッシブなプレーこそが持ち味であり、今の日本に必要なプレーだろう。渡嘉敷が暴れることなく、アジアで勝てる訳がない。そして渡嘉敷の実力は、この中国戦でほんの片鱗を見せただけ。本人も「まだまだできるはず。この試合に満足はしていない」という言葉からも分かるように、ようやくエンジンがかかってきたところである。

「アメリカでは20分前後しか出ていないから、体力がもつかどうか」と心配していたプレータイムも、中国戦は33分16秒と踏ん張った。

「終わってみてビックリ。『出来るじゃん、自分』って思いました(笑)。延長戦までもつれても出るつもりでした。後半、すごく疲れが出てきたところで、中国の選手もメチャクチャ疲れているのが分かって、『もうやるしかないじゃん』ってすごく思いました(笑)。今日は自分たちの走りが効きましたね」

前日(チャイニーズ・タイペイ戦)は自分自身に怒っていたのか、終始、堅い表情のままだったが、中国戦で自分のリズムを取り戻しパフォーマンスが上がってきたことで、ようやく渡嘉敷に笑顔が戻ってきた。勝負は、これからである。
 
 
◆次ページは「失点を56点に抑えたチーム・ディフェンスの勝利」について
 

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