CLOSE UP PLAYER
12年目の新天地で魅せる「渡邉拓馬の存在感」

シーズン12年目。出場時間も、得点も伸びている渡邉拓馬

CLOSE UP PLAYER
渡邉拓馬 
WATANABE , Takuma
(日立#13/188㎝/SG/34歳)

 JBL12年目で決断した日立への移籍だった。トヨタ自動車では11シーズンで4回の優勝を経験したが、チーム方針に伴って出場機会は減っていった。昨シーズンはプレーオフ6戦(セミファイナル2戦、ファイナル4戦)での出場時間はファイナル第4戦の1分17秒のみ。それでも、チームの精神的支柱という役割を果たしたが、「何かを変える時期」と移籍を決意。34歳になったベテランは、ベスト4に踏みとどまっているチームに、これまでの経験のすべてを注ぐ覚悟を見せている。

 11月17日現在、開幕から14試合すべてに出場し、昨シーズンを上回る奮闘が目立つ。平均出場時間は昨季の8.4分(29/42試合に出場)から22.4分、平均得点は3.52から7.64点と大幅アップ。11月16、17日には、首位戦線に絡む東芝に対し、ここぞというところの得点やムード作りなどで2連勝に大きく貢献。1戦目に右目の上を切るケガを負いながらも、2戦目の勝負所で見せたコートを駆け抜ける豪快なドライブインは、全盛期を彷彿させるものだった。

 新天地にかける34歳に、今シーズンへの手応え、意気込みを聞いた。(インタビュー11月17日)

インタビュー・文・写真/小永吉陽子
 
 
常にポジティブに、信頼に応える34歳
「自分が出たときには、何かひとつチームが勢いづくプレーをしたい」

――東芝に大きな2連勝。勝因は何ですか。

だんだんチームがまとまってきた気がします。これまでは我慢の時間帯や崩れそうな時間帯に、自分たちでミスしていたことが多かったんですけど、そういう時間帯をチームのみんなで乗り切れるようになったというか、我慢のしかたを覚えてきたのがあります。先週のトヨタ戦(11月10、11日)ではやられてしまったんですけど、全体的に見れば大崩れしない、昔からの日立の良さが出てきたと思います。ベンチで見ていても、コートでやっていてもそう感じます。

――東芝との2戦目は、残り3分の同点(66-66)の場面で、渡邉選手がリバウンドから一人で速攻に持って行ったプレーが勝負の分かれ目でした。その後はフリースローを着実に決めて加点。このようなビッグプレーはここ数年、影を潜めていました。自分では手応えをどのように感じていますか。

小野さん(ヘッドコーチ)がああいう苦しい時間帯に出してくれて、自分を信頼してくれることに感謝したいし、僕もそれに応えたいと思うし、そういうチャンスに貢献することを狙っています。自分が出たときには、何かひとつチームが勢いづくプレーをしたい。今日と昨日はたまたまそれが得点で現れましたけど、ベンチに座っているときもゲームの流れを見て、何かひとつは残したいという思いでやっているので、それが結果として出ているのは自信になります。

――移籍後、自分らしさが出せるようになったのはいつ頃からですか。

プレシーズンは大事な場面でシュートを落としていたし、(チームメイトに)気を遣っている部分もあってなかなか納得いくプレーができませんでしたけど、シーズンに入ってゲームをやっていくとともに、感覚も戻ってきました。結果が出せつつあるのも、すべて信頼してゲームに出させてもらっていることが根本にはあるんですけれど、そういうことに感謝しつつ、期待に応えたいと思って毎試合臨んでいます。

――今年は「ベンチメンバーとして、大事なところで仕事をする」役割を受け止めているのですか。

そうですね。去年の日立の良くなかったところは、接戦のとき、あと1本欲しいところで決められなくて負けていたと、小野さんは言っていました。自分の持ち味はシュートですし、今までもそうやって決めてきたので、その経験を生かしたいと思っています。

――チームメイトに声がけをしている姿も目立ち、存在感があります。リーダーシップは意識していることですか。

自分ではまだまだだと思っていますが、去年が去年なので、存在感は出せていると思います。僕の考え的には、常にポジティブでいたいんです。試合にはいろんなケースがあるし、いろんなことやってもダメなことはあるし、でもその場でやれることはやって、言いたいことは伝えていくべきだと思うので。みんながどう思っているかはわからないですけど、言いたいことは言って、チームの雰囲気がポジティブになればいいと思っています。

キャプテンの竹内譲次をサポートする渡邉拓馬。チームとして、徐々に粘りが出てきた

――年齢を重ねてからの移籍は一大決心だと思うのですが、今シーズンはどのような思いで臨んでいるのですか。

移籍に関してはトヨタの人たちにも理解してもらって、自分のプレーの質とか力を評価してもらったうえで決断したことです。この歳での移籍したことは自分だけのことを考えればいいのではなく、トヨタのためにも、日立のためにも、存在感を出さなきゃいけないと思っています。モチベーションは去年と比べれば相当高いし、明るくやっています。でも、シビアなピリピリした感じではなくて、楽しめてますね。そういうのが日立に足りなかったところだと思うんです。まだシーズンの途中ですけど、今のところは決断してよかったと思ってるし、失った自信やプライドはちょっとずつ取り戻しつつあるかなと思います。残り少ない時間ですけど(笑)

――トヨタでは自信を失っていたのですか? 

やっぱり、試合に出ないことが今までの経歴ではなかったことなので。控えでも試合には出ていたし、まったく出ていないというのはなかったですし、そうなったときの自分のメンタルは、今まで経験したことがなかったものでした。プレーのパフォーマンスが悪くなっていたので、もうダメかなと思った時期もありましたけど、最後にコートに出てそれを確かめたかった。少しは「まだできる」というのは見せられていると思います。

――移籍したことをいい決断にするのは自分自身、という覚悟が見えます。今後に向けて意気込みを聞かせてください。

僕が頑張っている姿を若手に見てもらい、日立というチームを一緒に上のレベルに持って行きたいし、それができたらうれしいですね。そういう意味では、このチームでは僕のやることはたくさんあります。まだまだシーズンの序盤ですから、戦いはこれからです。